あの子みたいに

林凛

出席番号1番 青木 

俺は1番の青木。


サッカー部に所属している。同じクラスの篠宮もサッカー部に所属していて、よく一緒に過ごしている。あいつと購買のパンをかけてじゃんけんするのが面白いんだ。

勉強は…まあ、そこそこのはず。

彼女もいる。部活が休みの水曜日は一緒に帰ってるんだ。いわゆるリア充に分類される生活を送っている。


そんな俺は、篠宮が羨ましい。


俺は、小学校4年生からサッカーを続けてきた。そのクラブチームでは、1番上手いって言われてたんだ。実際その通り、県の選抜にも選ばれたし、県内の強豪チームの監督にも声をかけられるくらいだった。中学でももちろん優秀で、「青木に気をつけろ」って言われてるくらいだった。

高校でもそうなるって、思ってた。

サッカーの強豪校に来たわけじゃない。大して強いやつがいたわけでもない。でも、チームで1番上手いって言われたのは、俺じゃなくて篠宮だった。

なんであいつなんだ。そういう思いでいっぱいだった。篠宮は高校でサッカーを始めた。そんなやつに、俺が負けるわけがない。そう思いたかった。7年間と1ヵ月だぞ。2倍なんてもんじゃない。でも、1年のエースに選ばれたのは、篠宮だった。俺の方が長くサッカーやってるのに。なんでこんなぽっと出のやつに負けなきゃいけないんだ。

「天才は99%の努力と1%のひらめき」というけど、そんなわけない。この世は、才能至上主義だ。1年かかって習得したことを、1週間でものにするやつがいる。俺が必死で積み上げてきたものを、簡単に飛び越していくやつがいる。認めない、認めたくない。

それに、母さんに顔向けできない。俺が小学生の時、毎回クラブチームの送迎をしてくれたり、試合の応援に来てくれたり、なにより、「自慢だ」と言ってくれた。勉強が得意なわけでもない、マラソン大会で1位になったこともない、そんな俺を認めて、褒めてくれたのが、サッカーだったんだ。俺からサッカーを取ったら何が残る。何もない。これ以外で母さんに褒められた記憶がない。もう「すごいね」と言ってもらえないかもしれない。こんなに応援してくれた母さんの期待を裏切りたくないんだ。もっと練習して、篠宮に勝たなきゃ。

でも、俺がサッカーをやる理由ってなんなんだろう。最初は、覚えることが沢山で、練習すればするだけ技術が身について、いろんな人の背中を追い越していくことが楽しかった。いつからか、人に認められたくて頑張るようになった。チームメイトに、監督に、そして母さんに。俺は、俺自身のために頑張ってるんだろうか。

篠宮がよく言うんだ、「サッカーって楽しいよな」って。俺は、「よかったな」としか言えない。同意できなかった。本当に楽しいのか?自分のために頑張ってないのに?対して、あいつは、全力でサッカーという世界で生きてる。


だから、だから、俺はあいつが羨ましい。












努力は才能に勝る、と言いますが、それは特例だと私は思います。天才だ、と騒がれる人ももちろん努力はしてきたのでしょうが、その何倍も努力をしても日の目を見ることがない人もいます。本当に必要なのは、それでも続けることです。継続は力なり。理由は高潔でなくてもいいです。挫折の先にあるものを目指していきたいです。たとえ結果が出ずとも、過程が消えることはありません。

親の期待に応えたくて部活を頑張る青木。親に認められる、ということを、愛情だと認識する子どもがいます。褒めることと愛することは別です。「えらいね」「いい子だね」という言葉は時に呪いとなります。子どもに対する声かけも考慮していくべきかもしれませんね。

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