タリアーナ
町の人はせっせと働いている。今町全体が活気づいていて皆楽しそうだ。男たちは肉体を鍛え上げて今度始まる決闘大会に意気込んでいるようだった。そんな様子を女たちはうっとりと見つめる。
強い男こそ理想だ、強い男からは強い子供が産まれる。鍛えあげられた筋肉を惜しげもなく晒す男たちに女たちは皆見惚れているみたい。
「そんなに嬉しい?」
強そうな男を見ては花を配る女。戦いが終わったら私と一夜を共にしませんか、という意味があるらしいけど。僕がまだ子供で体つきも小さいのを見て軽く鼻で笑われたけど、女は上機嫌で話してくれた。
「決闘の後は男たちも昂っているの。子供を作るのに最適な時期でもあるのよ」
なるほど、子供を残すことすなわち子孫繁栄と国の繁栄でもある。一年に一度のとても大切な行事なのだ。普段道や橋の建設に勤しんでいる男たちもこの日は血気盛んな様子だ。誰もが人生をかけて、伴侶を求めて、娯楽を求めて何もかもに酔いしれる。
「道づくりは、やらないでいいの?」
「こんな大事な日にやるわけないでしょ。うるさい子、さっさとどっかに行って」
手で追い払う動作をされては退散するしかない。僕は東に向かって歩き始める。そして町を出たところで僕は振り返った。広がるのは灰色の粉に埋もれた町。家から銭湯から闘技場まですべて灰色の粉によって覆い尽くされている。
町中の道は確かに広かった。闘技場がある中央広場に向かう道はだいぶ整っていたけど、外と繋がる道は細くて通りづらかった。大勢の人が一気に出て行くには狭すぎたんだ。
敵の侵入を防ぐためにあえてそういう作りにしていたみたいだけど、外から入って来にくいということは内側からも出にくいということだ。
「それはそうか。自然災害に慣れてないもんね」
僕は歩き出す。この道の続く先にある次の町へ。
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