三日酔いとホッピーで世界を救う
美由紀
第1話
私は昔から酔うと記憶が飛びやらかしてしまうことが多々あった。
彼女と別れていたり、仕事をやめていたり、最悪だったのはパワハラしてくる上司とホテルで目覚めた時だ。
何があったか怖くて確認できず、退職代行を使い仕事場に顔を出さずそのままやめた経験がある。
しかし、酒との悪縁は中々切れないもので、どんなにひどい目にあっても気が付けば飲んでしまう。
今回もやらかしてしまったようだ。
二日酔いで頭がガンガンする中起き上がると、ねぐらである四畳半の安アパートの煎餅布団に、私とその、ハリウッド女優のような金髪の美人が寝ていたのである。
何があったかわからず、頭を抱えている。
本当に何があったのだろうか、スマホがないであろうかと枕元を眠気眼でさがすと、なんと拳銃があった。
どこぞのアニメに出てくるようなサイレンサー付きの拳銃。
スライドを動かしてみるとまごうことなき実銃であった。
なるほど、まったくもって昨夜の記憶を思い出せない。
仕事の帰りに立ち飲み屋でホッピーの中を三杯お替りしたところまでは覚えているのではあるが……。
『お目覚めかな』
突然テレビが付いた。
そこには、上等な背広を着た老紳士が映し出されていた。
私は困惑してそれを見ることしかできなかった。
『エージェント、ホッピーの白。昨夜説明した通り、君には適性があり、A国から核兵器発射を――』
まてまてまて!
なんだ、エージェントホッピーの白って!
ださすぎるだろ! もっとこういうコードネーム的なのはカクテルの名前や洋酒の御洒落な名前をつけるものではないであろうか?
「どうした? ホッピーの白? このエージェント名も突如君が泣いて懇願するからつけたというのに……」
昨夜の私はいったい何をしていたのであろうか。
もうさらに頭が痛くなってきた、二日酔いだ。
こういう時に何をすればいいかは古来より決まっている。
キンキンに冷えたグラスを取り出し、そこに焼酎を注ぎ、ホッピーを入れて飲み干した。
すきっ腹にアルコールを入れたせいで胃が焼けるように熱く、しばらくすると脳みそにアルコールが回ってふわふわしてくる。
これはいつもの記憶がなくなるときの前触れのような感じだ。
私は何か話しかけてくる老紳士を無視し、ブロンド美女の横で布団に横になった。
そして、今度目が覚めると私は核ミサイルの発射施設で、核弾頭の上に横になっていた。
どうやら、二日酔いのうちに世界を救い今は三日酔いに襲われている。
ちなみに、私はホッピーの黒派である。
三日酔いとホッピーで世界を救う 美由紀 @miyumiyuki45
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます