「景空」

 詩も音楽も書き飽きて、少女は空を見ている。夏はやはり良い、背の高い雲が比べて聳え立っている。

 何も詩は浮かばないが、彼らの体が綺麗で、それだけでいい程であった。

 その水と水とが繋がり、高みを目指していくだけで人々の気を留める彼らが羨ましかった。しかし、その思いは浅はかであったとすぐに思い返した。

 気持ちは持たねど、仮にも雲は低温に耐え、有志で頂点まで上り詰める自然機関である。

 本当に原理的として厳しい体、その周りでありながら雲は空へ登っていくのだ。

 雲見さえ飽きても、それは決してやめなかった。耐えず形を変え、完全なる飽きには至れなかったからである。

 暑ささえ忘れる雲と母親、ともに偉大ながら、たまに姿が見えなくなる二物であるが、果たしてその違いは何であろうか。

 雲はそもそもにして現れ消えていく、化学の一派という概念であるが、母もまた現れ消えていく者である。しかし、母と母では繋がりにくい……

 自分でも思うほどくだらない似非哲学をしている時、雲は傍目にまだ背を伸ばしていた。真の芸術とは考えずして思われるものである。

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