【再掲】ゲーム世界から帰還した自己肯定感皆無の拗らせ君。二次元から追いかけて来たヒロイン達に迫られますが、惚れられる様なことをした覚えが全く無いのでとりあえず逃げたいと思います。
ヒロインの心情【今と出会い】side:高峰 鈴華
ヒロインの心情【今と出会い】side:高峰 鈴華
「あー今さら緊張してきたな〜…明日こーすけになんて言えばいいの?」
さっきまでは自信満々だったのに、今になってそんなことを自室で吐露する。するとそんなアタシの言葉に返事が返ってくる。
「お姉ちゃん!さっきからおんなじ事ばっかりうるさい!」
「ご、ごめんって流華…でもさ〜?どう伝えようか悩むじゃん…?」
そう言って同じ部屋にいる10歳下の妹、
でもやっぱりうるさいだのなんだかんだ言いながらも、血の繋がっているたった一人のアタシの妹。こういった困ったときはちゃんと話を聞いてくれる。
「もーウジウジお姉ちゃんらしく無いじゃん。見た目もお母さん譲りで超美人のくせに…そんなに悩むなら流華が康介兄さんを貰っちゃいますよ?」
「そ、それはダメ!絶対ダメ!!流華でもこーすけは渡さないから!!!」
「冗談冗談、そんなにムキにならなくても半分嘘だよお姉ちゃん。ほらそうやって流華に向かって言えるんだから…それを康介兄さんに言えばいいじゃん」
半分は本気なんじゃん!と思いながらも流華に言葉を返す。
「だって〜こーすけに対しては恥ずかしくて……素直になれないって言うか……」
「あー嫌だ嫌だ…高校三年生も明日で終わるって言うのに、初恋を拗らせた姉を見るのは」
やれやれと肩を竦める妹にアタシも突っ込む。
「な!何よ!流華だって初恋まだじゃんか!」
「流華は康介兄さんに恋してるから初恋は経験してるよーだ!今だって十年経った頃にどうアプローチしようかって計画してるところなんだから!」
「じゃあアタシと一緒じゃんか流華も!」
「「ぐぬぬぬぬぅ!」」
くうぅ!冗談か、そうじゃ無いかがアタシの妹だから分かんないし!それに昔から好きな物とかタイプが似てるなって思う事はあったけど、まさか特定の個人に初恋の人が一致するなんて思わないでしょ?!
そう流華と睨み合っていると、流華がこう言ってきた。
「ちゃんとそうやって妹相手にも対抗意識燃やせるんだから、お姉ちゃんはなんで康介兄さんの事を好きになったかをちゃんと思い返したらどうですかっ!」
そう流華に言われてハッとしたアタシは、こーすけとの出会いの事を思い返すことにした。
◇
アタシとこーすけが初めて会ったのは一年の時の夏だった。アタシが街に買い物に出かけた時に運悪くキモいおっさんにしつこく声をかけられて、手が出そうになってた時にたまたま居合わせたこーすけに助けて貰ったのが始まりだった。
今もあんまり変わってないんだけど、あの時のアタシは全人類の男の事はみんな敵だって思ってた時期でもあったから、助けてくれたこーすけに対しても『余計なことしないでくれるっ!?』って言っちゃったんだよね…
なんでそう思うようになったのかと言うと、実はアタシと流華は父親が違う謂わば異父姉妹なのだ。アタシのお父さんはアタシが6歳くらいの頃に、昔お母さんの事が好きだったらしい
その後お母さんは、お父さんの弟さんの
そして新しく産まれた自分の妹に対しても、アタシはお母さんの愛情が盗られると思って憎んでいた時期もあった。
それに加えてアタシは外国人のお母さんの血を引いているからか、昔から周りと髪色も顔立ちも違うし発育だって早かった。だからこそ敵認定していたそこら辺の男共のいやらしい視線が幼い頃から気持ち悪くて仕方なかった。
そんな事もあって当時何も悪く無いこーすけにも強く当たって、ずっと精神をすり減らして生きていた。
でもそんな可愛げのないアタシをこーすけは見放さずにいてくれた。最初会った時はお互い私服だったし、アタシがあの頃荒れていて学校にあまり行っていなかったのもあって、こーすけと同じ高校の生徒だって事もアタシは気が付いていなかった。
それから高校で顔をあわせるたびに邪険にするアタシの事なんて、気にも留めないかのようにお節介を焼いてきたこーすけに対して、アタシが『アンタ一体何が目的なワケ?!アンタもあのキモい男共と一緒で、アタシの事でも狙ってんの?!』と今考えるとこーすけに限ってそんな事あるわけもない事を言った。
するとこーすけは『……今のお前昔の俺に似てるんだよ、だからこそこのまま放っておく訳にはいかなかった。ただそれだけだ』とアタシが考えもしてなかった答えが返ってきて、訳が分からなくなったのを強く覚えてる。
当然アタシはそんな事を言われても信じられなかったから、どうせ相手にしなければ勝手に飽きるだろうと思い『あっそ!好きにすれば!』と捨て台詞を吐いて、アイツのことを監視して化けの皮を剥いでやろうって思ったんだ。
そうして見ているうちにアイツがアタシだけに優しい訳じゃなくって、目の届く範囲であればお年寄りでも、オジサンでも、子どもでも動物でも…誰にでも優しくて…お人好しで、その癖自分の事なんて頭にないみたいに怪我をするような危ない事でも、誰かが喜ぶならなんでもないような顔をして。
人のために何かが出来て、自分がやった事なのに自分は関係ないかのような態度で、見返りなんて求めず喜んでる人たちを尻目に静かに去って行く。
そんな所を見て…アタシがこーすけのことを少しずつでも信じてみようって、そう思えたんだよね…
◇
「どう?ちゃんと思い出した?」
「うん…そうだよ。アタシは今までこーすけから色んなものを貰ったし、今の家族関係だってこーすけが繋いでくれたようなもんだもん…やっぱりアタシ!誰にもこーすけを取られたくない!」
「うんうん!その決意を聞いても流華も諦めないけどね!でも応援してるよお姉ちゃん♪」
「なんでよ!そこはアタシのために諦めるとこでしょ?!」
ギャーギャーと騒ぎながら流華ともみ合いをする。……こんな当たり前の事もこーすけがいなかったら出来てなかったのかな、なんて…
「今のお姉ちゃんなら、その二人いるって言うライバルさんにも余裕だよ〜…十年後お姉ちゃんから盗るためにもちゃんと勝ってきてね?」
「ダメだから!絶対にこーすけはあげないんだから!!!」
そんな不毛なやり取りをしているうちに、リビングにいるお父さんに『鈴華は明日卒業式だろう?流華も早く寝なさい』と言われたので、『『はーい』』と返事をしてから私達は寝る事にした。
(絶対…ぜーったい!こーすけはアタシが堕とすんだからっ!)
そう布団の中で小さく呟いてアタシはゆっくりと目を閉じた。
アタシたちがもう一度出会えるのは少し遠い未来になるとも知らずに…
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メリークリスマス!
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