第37話 飲みかけ

 飲みかけのコーヒーを残して

 気づいたときには

 もう冷めてて

 思い出して後悔する

 昔からの悪い癖

 

 いつも怒られてばかり

 残さないで

 後で飲むからと

 少しだけ残した


 あの時を思い出すかのように

 走り出した車の中で

 もう一度、あの時を夢見て

 

 ふと、鼻にかかる残り香

 数々の悪癖あくへきに懐かしさでなぐさめられる

 いつからか寂しさが付きまとって

 もう一度、言われたくて

 治せないでいる

 

 あの日の夜景が横切って

 いつも、心のどこかで探している

 熱いコーヒーを入れて待っているから

 今度は残さないから

 停めた車で一人の夜に約束する

 

 あんなに言われても聞かなくて

 困らせて嬉しかったんだ

 少しでも長く話したかったから

 

 もう、そんなことはしないから

 何度も、あの頃の夜景をまわって

 帰ったら、最後の飲みかけを片付けて

 迎えにいくんだ

 

 後悔した先には冷めた飲みかけしかないけど

 もう一度、熱いコーヒーを一緒に飲みたいと

 願って見つめた先には


 コーヒーを片手に待っていた君がいた


 








 

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