第36話 空き地


 外に出る方が好きで

 気晴らしに風のように歩いて

 身体が路地と一体化になるようで

 薄暗さも居心地がいい


 目に映るものが育ってきた証で

 華やかさは無くても

 誰も歩いていなくても

 温かくて優しい


 確かに、ここを歩いた

 確かに、ここで過ごした

 頭じゃなくて心にめていた


 歩いて行くと見慣れた場所は

 いくつか空き地に変わってしまった

 何の知らせもなく


 姿形すがたかたちが変わっても

 昔、過ごした場所だから

 幾度いくども足を運ぶ

 それを目に浮かべて懐かしく想う

 

 今は、色んな場所で楽しめるけど

 

 あの頃は何もなかった自分を

 温かく迎えてくれて

 そこで過ごすことを

 静かに見守ってくれた

 

 離れても簡単には忘れられない

 大切な場所だから

 

 何もないところじゃなくて

 

 そこは何もない自分に

 何かを最初に教えてくれた

 

 その何かは、ただひまを持て余してたじゃなくて

 何もなくても生きていくということ

 気づかず、過ごしていくうちに

 教えてくれていた

 

 歩けばよみがえる  

 その時の想いと共に

 路地の先を進んでいく

 






 













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