光のページェント
垂乃宮
第1話
光のページェント。それは仙台で12月初旬から行われる美しいイルミネーション。定禅寺通りは普段の牧歌的な雰囲気から一転、まるで大人しかった女の子が妖艶な雰囲気を纏う如く彩られる。人間はその魅惑に駆られる蝶に見える。数千、いや数万の蝶が群がる。
普段なら純粋に楽しめるものであるが、お蔭様で私の利用するバス停にバスが停まらないとなるとやはり一大イベントは白け、蝶は農作物に群がるイナゴのように映る。
そんな心持で家に帰る途中、何か反骨心らしきものが芽生え、どうにも我慢できそうにない。大勢が定禅寺通りに歩いてゆく中、私だけでも逆を歩むのだという決心をした。面白い事に初めはちっぽけだった自分が大きく思えてくる。私は熱ってきて黒いコートを脱いでみた。快く感じられる。
どうやら信号は私に少しでも長く留まっていて欲しいらしい。私はもう一枚脱ぐ。もう白のワイシャツ一枚だった。自分という存在が世間に放射される気分に浮かされる。
次の信号までは長かった。私はしょうもない悪巧みをした。信号ピッタリゲームだ。ルールは単純明快で、信号が青になる時にちょうど歩行器の前に辿り着くゲームである。高を括る私であったが、歩行器のメモリ半分で残り20メートルしかない。このままでは負けてしまう。私は奥の手を使うことを決めた。一瞬の気の迷いの後、私は秘技「病人の足引きずり」をした。周りに人はいたが、自分を貫くことがプライオリティだった。
ここは切り抜けたが次が関門だった。青の間隔めちゃ狭いゾーンだ。私は自分の変わりぶりを滑稽に感じた。なんとか間に合ったことを理解した後、元陸上部であることに初めて有り難みを覚えた。
私は今日、優勝した。
光のページェント 垂乃宮 @miya_-2
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