宮廷の九訳士と後宮の生華

狭間夕

1.宮廷の九訳士

1-1.プロローグ

 ――静衛ジンウェイより、静月ジンユェへ。


 後宮での生活はどうだ、慣れない暮らしに苦労しているか?

 あまり活発な性格ではないお前のことだ、他の妃との関係にも悩んでいることだろう。侍女の林紗リンシャ麻朱マオシューも聞き慣れない言葉に戸惑っているに違いない。後宮入りは突然に決まったこととはいえ、大した支援をしてやれなかった兄を許せ。


 ただ、一つだけ良い知らせがある。


 しばらくの間、宮城の防衛の任に就くことになった。要するに、お前の近くにいる。こうして筆を取っている間にも宮廷が見えている。


 もしも困ることがあれば壁の外にいる兄を頼れ。


 そして、忘れるな。


 兄の心は、いつでも静月ジンユェと共にある。

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