追放されたけど万能クラフト能力で建物も武器も作りたい放題だから最強領地を作る

年中麦茶太郎

第1話 これは追放確定演出か?

「エリオット様の固有スキル名は……『遊び人』でございます」


 神官の言葉を聞いて俺は、なるほどなぁ、と納得した。

 なにせ前世ではゲーマーだった。

 ゲームのために睡眠時間を削りすぎて心臓麻痺で死んだ。


 そして異世界に転生し、エリオット・アルカンシアとして生きているのだが、どういうわけか、前世でやり込んだゲームのスキルを現実世界で使えるようになっていた。

 WEB小説だと、異世界転生した主人公はチートスキルを授かるのが定番。その類いのことが俺の身に起きたわけだ。


 今日までゲームスキルを使ってアイテムを作ったり、身体能力を強化したりしていたが、遊び人というスキル名だったのか。


「遊び人!? なんと情けない名前の固有スキルか……どんなことができるのだ?」


 神官を問いただすのは、ここアルカンシア王国の国王にして、俺の父親。

 その息子である俺は、つまり王子である。


 この世界の人間は、誰しも固有スキルを持って生まれる。

 しかし固有スキルがなんなのか、普通に生活していては、なかなか気づけない。

 そこでこの国の王族や貴族は、特殊な能力を持った神官を呼んで、十歳の誕生日に固有スキルを調べる風習がある。


 なぜ十歳まで待つかというと、あまり早くから固有スキルが分かると、それだけに囚われて視野が狭くなるという理屈だ。

 本当の理由は、死産だったことにして赤ん坊を廃棄し、強力な固有スキルを持つ跡取りが生まれるまで殺人&子作りリセットマラソンを繰り返すのを防ぐためらしい。

 生まれたばかりなら殺せても、十年も育てたら愛着が湧いて、そう易々とは殺せない。


「寝る間も惜しんで遊び、それによって技を会得する……というスキルのようです」


 神官は遠慮がちに答えた。


「寝る間も惜しんで遊んで会得できる技とはなんだ! サイコロの振り方か? カードのシャッフルか? それとも女遊びが上手くなるのか!?」


「わ、私にはそこまでは分かりません……」


「くそ……代々アルカンシア王家の者は、誰もが剣豪や賢者といった強力な固有スキルを授かっている。ワシとて大魔法師だ。なのにワシの長男が遊び人とは……もういい。跡取りはクレアにしよう。女王というのが気に食わんが前例はある。遊び人が国王になるよりはずっとマシだ」


 そう言って父上は聖堂から出ていこうとする。


「お待ちください、父上。遊び人というのは確かに印象がよくない名前ですが、だからと言って使い物にならないとは限らないでしょう」


 俺は別に次の国王になりたいわけじゃない。

 だが、こういう話の流れだと、WEB小説では大抵、主人公が実家を追放される。

 さすがに住む家を失うのは嫌だ。


「黙れ。ワシに恥をかかせおって。もうお前など顔も見たくない!」


 あ。

 これは追放確定かな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る