第44話 ヤンヤン、会戦に突入する!

 元帥たちを途中で拾った連合艦隊は、ついに華国の首都に突入した。

 私がこの前暴れたところね。

 ちょうど、コサック軍艦隊も到着したところだったみたい。


 首都の向こうに、大きな陸上戦艦が幾つもいる。

 みんな亀みたいな形をしているなあ。


「純血連邦の陸上戦艦は、基本的にMC空母も兼ねているっす! 連合だと野ざらしっすが、向こうは完全に収納できるっす!」


「搭載する機数も向こうが多いすなあ……。性能も向こうが上……!」


「ダメじゃーん」


 ウーコンとサーコンからは絶望的な情報しか来ないなあ!


「うむ、普通であれば敗北必至。我輩もここから逃げ出すところだ」


 艦隊の戦いを形式上は指揮するため、元帥は艦橋に向かう途中みたい。


「だが、我輩の勘が言っている……。この戦場で最も安全な場所は、よりによってこのオンボロ戦艦の中なのだと……!! おいヤンヤン少尉! 我輩を守るために戦うのだぞ!!」


「ほーい」


 一応少尉にしてもらったし、その分は仕事をしようかなあ。


「うう……僕らついに年貢の納め時っす」


「もうこの世の終わりす」


「ウーコン何その言い方!」


「機関長の先祖の言葉らしいっす!」


「ほえー、少し賢くなった!」


 わいわい騒ぎながら、私たちはMCに乗り込むぞ。

 タイヤをガラガラ走らせて、滑走路に出てくる。

 ちょうどその頃に、グワンガンもガチャガチャと変形を始めた。


 おお、連合艦隊もみんな変形している。

 コサック軍も変形してる。

 つまりこれ、降伏しろ降伏しろって言う戦い前のやり取りが破綻したわけだ。


 まあコサックとはまともなやり取りはできないよねえ。

 開戦、かいせーん!


 コサック軍のMCが、陸上戦艦からどんどん出てくる。

 うわあ、どれくらいいるんだろう。

 めちゃくちゃ多い。


 コサック共和国の全戦力の90%が来たんだっけ。

 とんでもないなあ。

 こっちの戦力もみんな出てきたけど、全部で57機。


 ひえー、戦力差十倍以上!

 これは……。


「まあいける感じじゃない?」


『ななななな、何を言っているっすかヤンヤン!!』


『とんでもない事を言ってるすよこの人。ヤンヤンは無理を通して道理を引っ込め続けてきたかも知れないすけど、常人には無理すからね!』


「えー! やってみないと分からないよー! それと二人とも、私は一応上官だよー」


『はっ』


『ひい』


 あっ、かしこまった!

 この人たち、上官には弱いなあ……。


「じゃあ私に続けー。突撃ぃ」


『ひぃー』


『ひぇー』


 なんか絶望的な叫びを上げながら、ウーコンとサーコンが動き出した。

 

 こっちは滑走路から降りて車輪でコロコロ。

 コサック軍は気が早くて、もう飛び立ち始めている。


 えー。

 MC、燃費が悪いから5分くらいしか飛んでられないのに。


 だけど、こっちにも気が早いのがいた!

 ワーッと飛び上がる連合のMCたち。


『うおおおお行くぞ行くぞ行くぞ!!』


「あっ、ポンチャック曹長!」


 一番槍になったポンチャック曹長が、コサック軍と正面から激突ーっ!


『ウグワーッ!!』


 あっ、集中砲火で爆発した!

 し、死んだ~!


 私の脳裏を、ポンチャック曹長とのうす~い思い出がよぎる。

 うん、ほとんど思い出がないね……。


 だけど顔見知りが死んだのはなかなか……いや、過去に目の前で両親が虎にやられてるからそうでもないな。


「えー、グワンガン隊のヤンヤン少尉です。少尉、そう、少尉です。皆さん、あんまり飛ばないようにしましょう。燃料がもったいないです。飛ばないでいいです」


 私はオープン回線で呼びかける。

 連合でMC戦を一番たくさんやってる私の言葉は、説得力抜群だぞ。


『なんだこの声!? ガキか!? ふん! ガキは黙ってろ! コサックぅぅぅぅぅ! ぶっ殺してやるぁぁぁぁぁウグワーッ!!』


 あっ、また突っ込んだのが穴だらけになって爆発した!

 あれは脱出も無理だなあ。


『く、くそーっ! 仲間をーっ! コサックめぶっ殺してやるぅぅぅぅぅぁぁぁぁウグワーッ!!』


『まだまだ俺が続いて道を切り開いてやる! 俺が英雄だああああウグワーッ!!』


「あーっ、が、学習しないで次々突っ込んで撃たれていく~!」


 コサック軍の損耗ゼロ!

 うちは突っ込んだ三機が落ちました!


「どういうこと?」


『普通はああなるっす』


『数と腕と装備で負けてるす』


「ひえー! 訓練所では妙に弱いと思ったけど、あれが全力だったんだ……」


『ヤンヤン! オープン回線オープン回線!!』


「あ、ごめんごめん」


 私のよわよわと批評する発言が、うちの軍に流れてしまったみたいだ。


『が……ガキィ~!』


『だが俺たちがコサック相手に腕でも数でも装備でも負けているのは確かに……!!』


『ちくしょう、言い返せねえ!』


『お前たち、いい加減におし! こっちはただでさえ数で負けてるんだ! 作戦で戦うんだよ!!』


 おおっ、ロアン中尉~!


『そ、そうか! 中尉の言う通りだ!』


『俺たちもにしか無いもので戦うんだ!』


『それはなんだ!? 心意気だ!』


『うおおお連合魂~!!』


『突撃~!!』


『『『ウグワーッ!!』』』


『おバカかい!? 飛ぶんじゃないよ! 地上で迎撃するんだよーっ! 撃て撃てーっ!!』


 迫りくるコサック軍に向かって、バリバリとマシンガンが放たれてますよ!

 いいんじゃないでしょうか。

 問題は当たってないことなんですが。


「よし、じゃあ私はこの整備長がさらに改造を加えた長距離砲をですね……」


 コロコロ走りながら、バンバン撃った。

 コサック軍の機体がぼんぼん落ちていく。

 うひゃー、でも全然減った気がしない。


 これはきりがないなあ!

 よし、じゃあ私が今度は突っ込む番かなあ。


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