第27話 ヤンヤン、素知らぬ顔で反逆する!

 格納庫に行ったら、スアが組み上がっていた。

 早いなー!


 整備士の人たちが、そこらへんで寝袋に入って寝ている。

 自室に戻らないで、作業場で雑魚寝することが多いらしいんだよねえ。


「でも今は突貫作業ありがたし! 装甲まだ取り付けてないみたいだけど、ちょっとお借りしますね……」


 見た目はコサック軍っぽい機体の新生スア。

 真っ黒なMCに乗り込んで、私は出撃した。

 MWでタイヤを取り付けて、コロコロ転がして走る。


 おお、速い速い!

 前のスアよりも全然はやーい!!

 これが新型の威力か。


「すみませーん! 止まってくださーい!」


 私が華国軍の後ろからガラガラコロコロ走っていったら、彼らは振り返ってギョッとした。


「こ、こ、コサック軍!!」


「まだ生き残りがいたのか! せっ、戦闘準備ー!!」


 わあわあと動き出した。

 何か勘違いされてませんかね?

 だが、それよりも今は重視することがあるのだ。


「えーと、皆さん! バトーキン自治区に戻って何をする感じですか!」


「くっ、侵略者がそれを問うか! 我々はバトーキン自治区の正統な管理者だ! あそこは古来から我々の土地だ! 元の場所に戻るだけだ!」


 なんか偉そうな人が喋っている。


「なるほどー。レジスタンスの人が徹底抗戦するって言ってますけど」


「それは過ちだ! 我々華国の管理こそが正しい! なぜならあそこは古来から我々の土地であり、全ての民族は華国のもとに管理されるべきだからだ! 身の程知らずなレジスタンスならば踏み潰してくれよう!」


「ひえーっ、じゃあ敵確定です」


「な、何を言って」


 うりゃー、アサルトライフル!

 シングルショットの射撃は、MCの間を縫って、ずっと先のMWに乗っていた偉そうな人に見事命中した。

 あー、消えて無くなった。


『か……閣下ーっ!!』


『ひええええどういう命中率だ』


『党にどう申し開きをしたらいいんだ!? あの方は主席の残り少ないご親族で……』


『ええい、やれ! やるしかない! せめてこのコサックの首を取って……!!』


 ということで戦闘開始です。

 私は車輪を切り離して飛び上がる。


 おお、スアよりも全然バックパックの立ち上がりが速い!

 これは確かに強いなあ。

 今まで工夫しないといけなかったところが、しなくても良くなってる。


 えーと、感覚的に推力が二倍くらい。

 はっや!!


 一瞬で華国のMCたちの背後まで回り込んだ。

 で、操作系。

 おお、反応はっや。


 スアが一瞬遅れる感じだったのに、即座に動くじゃないか。

 コサックこんないいのに乗ってたのに弱かったのか……。

 やっぱり操縦は日々工夫だよね。創意工夫を失うとすぐ弱くなるのだきっと……。


 私は物思いにふけりながら、背後からMCたちを射撃した。

 バックパックに直撃すると、普通にそこはバッテリーがみっちり詰まっているので誘爆するよね。


『おぎゃグワーッ』


『ウグワーッ!』


『な、なんウグワーッ!!』


 振り返るまでに、半分くらいが爆発した。

 この人たち、密集してたから残りも爆風で煽られるよね。

 それをライフルでバリバリバリーっと撃つ。


 また爆発した。


「ひっ、ひぃーっ!!」


 偉い人たちが乗っているらしいMWが逃げようとする。

 私は振り向いて撃った。

 MW粉砕。

 乗ってる人も煙になった。


 ……ふうー。

 これでレジスタンスは安全だ。


 私は再びバックパックにタイヤを取り付けて、コロコロ走りながらグワンガンに戻った。

 整備の人たちが、呆然としながら出迎えてくれる。


「お、おいヤンヤン、何をしてきた?」


「仲良くなったレジスタンスのイケメンが危なかったので、華国の人たちにちょっと待ってって伝えたんですよ」


「ふんふん」


 整備長が難しい顔をしてうなずいている。


「そうしたらキレて攻撃してきたので反撃したら全滅しました」


「ははあ」


 あっ、整備長考えるのをやめたな。

 そこで、他の整備士がハッと気付いたようだ。


「整備長! これ、まだ装甲付けてないですからどう見てもコサックの機体ですよ!」


「そ、そうか! そうだったんだな!」


 我に返る整備長。


「生き残りの凄腕のコサックに華国の残党が遭遇し、練度が足りなかったあいつらは全滅したのか! いやあ、残念だ、実に残念だなあ! おい、艦長にそう伝えておけ。あの人は絶対に話を合わせてくれるから」


「了解!」


 整備長の言う通りになった。

 そもそも、グワンガンの人たちはみんな華国の軍隊が大嫌いだったので特に気にしないことになったようだ。


 なんかやたらと高圧的で、連合本部が置かれていたことをずっと自慢していて、他の国々を見下してたらしい。


 ウーコンとサーコンが嬉しそうに、「どうだった? 実力どうだったっすか?」とか聞いてきた。


「うーん、こう……実戦経験が全くなさそうな感じで、固定された的をバリバリ撃ったみたいな……」


「ははは華国の連中も大したことないすなー」


 おっ、ウーコンとサーコンは随分強くなったんだなあ……。

 私がニコニコしていると、二人が静かになって去っていった。

 うんうん、せめて前線に出てこれるようになってくれよな……!


 グワンガンはそのまま、バトーキン自治区まで進んでいった。

 するとなんだか、煙が上がっているんですけど。


「あー……。華国もコサック軍に負けないくらい、とにかく数は多かったらしいと聞いたことが……」


 整備士の人から不吉な証言が!

 いかーん!


「もうスアの装甲取り付けてます?」


「ああ。もうどこからどう見ても虎縞のスアだぞ!」


「ありがとうございます! じゃあまた華国のMCをぶっ飛ばしてきますね!」


「えっ!? いやいやいや、今度はバレちゃうから! バレるから!」


「自治区が本当に自治区になればいいんじゃないですか? つまり華国の人が個々から全員いなくなれば! 私、ナイスアイデア!」


「う、うわーっ! ヤンヤンを止めろー! 国際問題になるーっ!」


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る