森見先生と私

 私は小説をあまり読まない。もしくは読めない。

 たいていの小説は一行目で、えい、やあと、投げ出してしまう。

 その原因は、おそらく、中高生のときに、星新一ばかりを読んで過ごしたからだと思う。「飾り」のある文章がほとんど読めないのだ。


 そんな私が、手に入るすべての作品を読み、お気に入りのものは何度も読んでいるのが、森見登美彦先生である。

 しかし、そんな先生の作品の何がよいのかと問われると、答えに困ってしまう。

 明確な理由はないが、とにかく、読むのが苦でないのが大きい。

 もちろん、中には読みにくい作品もあるが、そのうち、読みやすくなるだろうと、何だかんだと最後まで読んでしまう。


 森見先生は、明るい話から暗い話まで、幅広く書かれているが、私は暗めの話のほうが好きである。

 いちばん好きで、繰り返し読んでいるのが、「桜の森の満開の下」である。あれはよい短編だ。

 主人公を惑わせる「女」のような人物を、いつか私も作品に登場させてみたいものである。


 とは言え、もちろん、「四畳半神話大系」「夜は短し歩けよ乙女」「太陽の塔」などの有名どころも好きだ。

 「四畳半神話大系」「夜は短し歩けよ乙女」は、湯浅政明監督のアニメーションもよかった。とくに、「夜は短し歩けよ乙女」は好きで、三回観ている。色使いが絶品である。

 「太陽の塔」は青春時代を思い出し、せつない気分になる。解釈の分かれるラストがたいへんよい。


 そんな存命作家でゆいいつ熱心に読んでいる、森見先生が選考委員を務める「日本ファンタジーノベル大賞」に、先生に読んでもらいたい、ただそれだけのために作品を送ろうと考えている話を前回した。

 ホームページを見たら、2025年度の募集要項が折よく更新されていた。

 熱心に要綱を確認した私を待ち構えていた第一の関門は、そもそもファンタジーとはなんぞや、私の作品はファンタジーなのか、という大問題であった。



 おまけの雑談。

 森見先生は、おおくのファンを抱えている作家である。

 であるから、カクヨムにも、森見先生の影響を受けた作品があってもよいものだが、ほとんど目にしない。どういうことであろうか。

 森見先生に影響を受けている人は、インターネットに投稿しないで、公募に挑戦している人が多いのだろうか。

 森見先生に影響を受けた作品が、カクヨムをはじめとした小説投稿サイトに載っていれば、よい暇つぶしになるのになあと思わぬでもない。

 では、おまえが書けばよいと思われるかもしれないが、読むのが好きな作風と、自分で書いてみたい作風がちがうというのは、ままあることだと思う。生意気にも、そういう話だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る