第16話 二股疑惑……
「……それは、おんな。だな。あたしの見立てはほぼ外れたことがないから間違いないな」
「えっ?」
「女がいるな、ってことだよ。その彼の家には女が匿われているか、しょっちゅう通ってくるなりがあって、乃愛とバッティングしちゃマズイってところじゃないか?」
「……まさか」
まさか誠さんに限ってそんなことは無いと思う。彼は誠実だし、わたしにもすごく優しい。そんな誠さんが二股なんてありえない。でも、サチの指摘にも納得してしまうところがあったりもする。
「あんたの元カレも浮気が別れた原因だったよね? ほら、男なんてそんなもんなんだよ。そーいやその元カレって今どうしているんだろうね。夕神なんとかってちょっとイケメンだったよね」
「この前会ったよ」
「ん? その元カレとか?」
「そ」
「元サヤとか乃愛も無いでしょうね?」
「だれがっ。そもそもがお断りな上、あんなデブなんか願い下げだよ」
「デブ?」
元カレの夕神優斗は、あまりにも変わりすぎていて本当に最初は本人だと気づかなかったぐらい。
痩せてスマートだった面影が今は全く無かった。この3年あまりでブクブクと太ったらしく、見た目から推測する体重は100キロ超え。ほんと誰があのイケメンの優斗を想像できるだろうかと思うほど酷かった。自分に甘いやつだったから、不規則な仕事時間に不摂生を重ねてあの見た目になったのだろうと容易に想像できる。
「あんな奴のことはどうでもいいの。今は誠さんのほうが一大事なんだからね」
「はいはい。じゃあいっそのことマンションの前を見張ったどう? 忙しいって言っても毎日午前様ってわけじゃないでしょ? もし女がいるなら男がいなくても部屋の明かりも点いているだろうしさ」
わたしもかなり切羽詰まっていたんだと思う。サチのこの提案がものすごく的を射たものに思えてしまっていた。まあ、冷静になってみると恋人でもない男性の行動を監視するなんてストーカーと言われても否定が出来ない。
「早まったかなぁ……」
彼のマンションのエントランスを見渡せる小さな公園に隠れて彼の帰りを待つ。真夏の暑さの下では見かけなかった蚊がブンブンと飛び回ってうざくて仕方ない。虫除けスプレーもってきて正解だった。
仕事終わりに直行でここに来て8時。部屋の明かりは点いていないのは確認済み。
「もし女の人と帰ってきたりしたらどうしよう……」
不安からこのまま帰りたくなるわたしだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます