第15話 でも……やっぱり……
「あ、あ、そうだよね。そうそう何回も出かけるわけにはいかないよね……ごめんなさい」
ズンッと肩も重くなって、うつむき加減になってしまう。なんなら泣きそうまである。
「いやいや、違って! 僕もすぐにでもまた出かけたいとは思っているんだけど、今仕事がね、半期決算期でとてつもなく忙しくて、それに会社の都合を乃愛ちゃんに言っても仕方ないんだけど、半期決算が終わったら組織変更まであって、関係ない僕の部署まで巻き込まれていて……あの、その、ね。それが終わるまでちょっと余裕がないんだ。ごめん」
真剣な表情をして誠さんが遊びに行けない理由を早口で説明してくる。その表情がとても必死過ぎて可笑しくなってきた。
「うん! そういう理由なら仕方ないよね。わたしもごめん、早とちりしそうになった。じゃあ、忙しいのが過ぎたらまたよろしくね」
「はい! もちろん。でも遠出とかないなら息抜きにデ、デートするのもOKだから」
そういうのは都合見ながらラインで話そうって事になった。
良かった。誠さんもわたしとまた遊びに出かけたいと思ってくれていた。
ほんと今日はいい日だったなぁ。
「――といことがあったのが、つい先週のことってわけね」
「そうなの。あの後もラインしているんだけど、未読の時間がすごーく長かったり、既読してから返信が来るまですぐじゃなかったりするようになったの」
「単純に忙しいんじゃないの? そー言っていたんでしょ?」
「確かに忙しくなるとは言っていたけど、音声しても出られないなんて今までなかったし……」
「おいおい、恋する乙女はめんどくせーなぁー」
「ウルサイ! 久しぶりの恋なんだから患ってもしょうがないでしょー!」
今日は仕事帰りにサチを拉致って、カフェでディナーをとりながら話を聞いてもらっている。
「そ~言う話はさぁ、酒入れながら話すのが筋ってもんじゃないの? 乃愛」
「わたしは週末以外お酒を飲まないの。それに真剣な話だからお酒の席は嫌」
「ますますめんどくさいなぁ」
「めんどくさい言うな!」
「へいへい。で、それをあたしにどーしろって言うのよ?」
サチはきのこと秋鮭のクリームのニョッキを突きながら、ニヤニヤと面白そうにわたしの顔を伺ってくる。めんどくさいと口では言いながら、けっこうこの状況を楽しんでいるのが見て取れる。とても腹立たしいけれど、こんな話はサチ以外には出来ないので、辛抱しながら話を続ける。
「週末に彼の家に行こうと思ったのだけど、『今はちょっと……駄目かな。僕が迎えに行くよ』っていって家に行かせてもらえないの。これってなにか理由があるのかな?」
ワタシ的には来てもらってばかりでは申し訳ないから偶には彼の家に行こうかなってくらいに軽い感じで話したつもりなんだけど。明確な拒否が来てちょっと、いや大分落ち込んだのはさすがにサチにも内緒だ。
「ふーむ。それは……」
「それは? なによ」
妙に真剣な顔するサチに早く話すように急かす。
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