合コンに遅刻したOLの話
403μぐらむ
第1話 佐川が悪い
見つめるディスプレイの右下に小さく20:12と表示されている。
今夜の約束は電車で二駅向こうのイタリアンバルに19時半集合となっていたはず。
「完全に遅刻だよね。わたしが悪いんじゃないにしろ怒られるんだろうな……」
週末の今日は大学のときの友人であるサチ主催の合コンのある日。合コンなんかでまともな男に会えるとは思えないけど、大学卒業から3年も経っているのに仲良くしてくれている稀有な友人の頼みとあっては無下に断ることなど出来るはずもない。
「クソ佐川め……。月曜のランチは佐川の奢りに決定だよ。拒否権は一切なしっ!」
定時の18時に終業して、着替えと化粧直しを完璧にすれば時間ぴったりになると計算していたのに、17時近くなって同期の佐川義孝のミスで急遽見積もり書類の修正が入る。ムカつくからフルネームで呼んでやる。
修正内容のボリュームから見て残業が決定した瞬間だった。
文句の一つも言ってやりたいところなのに当の佐川は遠方に出張でこのフロアにいないときた。ヤツのいるであろう方角に怨嗟の籠もった恨み節を吐いてはキーボードをカタカタ鳴らす。
「課長。修正終わりました。ファイルは佐川のフォルダに入れてあるのでチェックお願いします。では、わたしは用事があるので帰ります。お先に失礼します」
課長の返事も待たずにとっととフロアを出る。なにか課長がすがるような手を伸ばしていたけど見なかったことにする。
急いで更衣室に走り込むと気を使うことなくさっさと着替えと化粧直しをする。金曜日のこんな時間に女子更衣室には誰もいない。
『あと30分で着くと思う』
サチにラインするが既読はつかない。まあ一番盛り上がっている最中だろうし、スマホなんかには注意は向けないよね。
会社を出て眼の前にある地下鉄の階段をなるべく急いで下る。
「こんなことになるならヒールの高い靴なんか履いてこなければよかったぁ」
今更悔やんでも遅いので、転ばないことだけを一番にホームまで向かった。
「遅い!」
「ごめんなさい。でも、しょうがないじゃない……」
案の定サチに怒られるが、サチの隣に座る男性が宥めてくれたので、お小言は一言だけで済んだ。名の知らぬその男性(好みでない)に感謝しておく。
「はいはい、ごめんねー。1時間以上も遅刻して来たアホな子がいるので再度自己紹介をお願いしまーすっ。まずは遅れてきたのだからノアからちゃんと謝って自己紹介をしなさいよ」
そこそこ出来上がってきているのか、人のことをアホ呼ばわりするサチにムッとしながらも、責めはこちらにあるのは間違いないので素直に謝りながら簡潔に自己紹介する。
「えーっと。
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