僕はいつまでも君の隣で
ハルノエル
第1話 突然の出会い
僕は1人だった。1人がいいと思っていた。どうせ離れられるぐらいなら、隣には誰もいない方がいい。そう思っていた。でも、もし僕から離れない人がいるとしたら、その人が僕の運命の人なんだろうな。
「今年のクラスはどこになるのかな?遠くないと嬉しいんだけど」
今日から僕達は高校二年生。とはいえ、僕のやることは変わらない。教室の隅っこで、ぼーっとするだけだ。
今年は三組か。端じゃないならどこでもいいや。ただでさえ学校っていう面倒な所に通ってるっていうのに、クラスへの移動すら面倒くさいのは御免だからね。
「ふわぁ」
席についた途端、眠気が襲ってくる。昨日はあんまり寝れなかったからかな。もう春休みも終わったし、夜ふかしは少し控えないといけないね。
今からでも軽く寝ようと思い、寝る体制に入ったのだが……
「お、今日はなんだか眠そうだな。昨夜はお楽しみだったのか?」
去年出会った少し、いや、かなりうるさい男がニヤニヤした顔で僕に話しかけてきた。はぁ、これで僕の一人静かに過ごす計画も台無しか。まあ、ペア探しとかで困らなくなるのは嬉しいかな。
「確かにある意味ではお楽しみだったけど、お前が期待してるような展開じゃない。僕にそんな相手がいないのはお前も知ってるでしょ。ただ本を読む手が止まらなかっただけだよ」
「相変わらずだなぁ、お前は。去年も何回か聞いたぞ、それ。まぁ、相手がいないのはわかりきってたし、そんなことは置いといてだ。
「そんなこととは失礼な。ちょっと気にしてるんだから。それにそういうお前も今はいないだろ。で、なに?」
僕の名前は
そして、今話しかけてきたのが引き続き今年もクラスメイトになる
こいつは基本的にどうでもいいことを言ってることが多いんだけど……僕の睡眠を邪魔する程の情報なのか?そうじゃなかったら要件だけ聞いて寝てやる
「今日転校生が来るって知ってたか?」
「そうなの? なんで知ってるのさ」
「それは企業秘密だ。女の子らしいけど、狙ってみるのか? そろそろ彼女の欲しそうな蒼君」
「いやいや、無理だろ。僕みたいなやつが話しかけても嫌なだけだよ。それと、勝手に彼女が欲しい人認定しないでくれる? 少し気にしてるだけで、そんなに欲しいわけでもないよ」
こいつはどこからそんなことを聞いてきたんだ?そういうことって基本的に隠されてると思うんだけど……
「相変わらずお前は自己評価が低いなぁ」
「そうかなぁ。僕は結構正当に自分を評価できてると思ってるんだけど」
「そうだよ。てか、できてないから俺がそう言うんだよ。異論は認めん!」
そんな会話をしているうちにHRが始まる時間になり、先生がやってきた。今年はこの人か……怖いところもあるけど優しい先生だ。変な人じゃないだけありがたいかな。
「お前ら席に付けー。今日はなんと、転校生が来るぞー! さぁ喜べ男共、二人とも女子だ! それじゃあはいってこい!」
そうして、二人の女の子が教室に入ってきた。一人は薄いオレンジ色の髪を後ろでまとめた明るそうな人。もう一人は黒髪をそのまま伸ばした大人しそうな人。まぁ、性格に関しては僕の主観的な意見だから合ってるかどうかはわからないんだけど。
「花崎女子高校から転校生してきました。
「転校生してきたってなんですか……同じく花崎女子高校から転校してきた
少しの静寂の後、教室が喧騒に包まれた。しかしそれも一瞬のこと。先生の一声で教室は一気に静かになった。凄いな。
「お前ら静かにしろー。全員揃ったことだし、今から席替えをする。至急準備しろ。今日決まった席でしばらく過ごしてもらうからな」
もう席替えをやるのか。皆からも困惑する声が聞こえる。僕からすればどこの席でも変わらないし、してもしなくてもいいんだけど。なんて思いながらくじを引く。
僕の席は……窓際の一番後ろの席か。注目を浴びないようで意外と見られてる席だ。
「よろしくね!」
隣に来たのは、白石さんだった。あぁ……周りからの嫉妬の目線が……
女の子との付き合いはほとんど無かったから、どう接すればいいかわからないんだよなぁ。ま、ほとんど話さなかったらいいだけの話か。
「よ、よろしく」
「えっと、君は?」
「あ、池田蒼です。よろしくお願いします」
「そんなに緊張しなくてもいいのに。同じクラスなんだし!」
彼女の笑顔に、少し気圧されてしまった。全身から溢れ出る陽のオーラがすごい。やはり、僕にはまだ早いステージだったようだ。浄化されそう。
「同い年でも緊張はするよ、白石さん。女の子だとなおさら」
「そっか〜、ピュア? なんだね。それと、私のことは星華でいいよ!」
「はぁ、わかったよ白石さん」
「むぅ。まぁいいか。よろしくね!」
これが、これからちょっとばかり長い付き合いになる白石星華との出会いだった。
※
「ねぇ、蒼君」
今は昼休み。空とご飯を食べるために空のところに行こうとしていた時、突然白石さんから呼ばれた。あんまり僕のことを呼ばないでくれよ。嫉妬の目線が……
「ど、どうしたの?」
「お昼いっしょに食べよ!」
手に弁当を持ってこっちに来る。え、嘘でしょ? 僕と? まじで? 目立つから辞めてほしいんだけど。
「え……僕?」
「君以外どこに蒼君がいるの?」
「それはいないけど……」
「でしょ?」
「でもなんで僕?」
訳がわからない。さっきまともに話せなかったし、目も合わせれてなかったのに何で僕が選ばれたんだ?他の人を選んだ方が絶対に建設的な話ができると思う。
「うーん、なんとなく! じゃ、行こっか!」
「え、ちょっと待ってよ」
みんなから凄い見られてるし、白石さんは真剣にこっちを見てくる。
「ありがとう。じゃ、屋上行こ〜!」
「ちょ! まだいいって言ってない!」
そうして僕は嫉妬と好奇の目線に晒されながら、強引に手を引かれて屋上へ向かうのだった。
後で色々聞かれそうだなぁ。誰か助けてくれ。
「寒い……ここじゃなくても良かったんじゃない?」
「それはごめん。でもここ以外空いてそうな場所が無かったからさ」
今は四月。本格的な寒波は去ったとはいえ、まだまだ寒い季節だ。珍しく屋上が開放されてる高校なのだが、わざわざこんな時期に屋上に来る人はいない。
「それで? なんで僕を誘ったの?」
「理由が無いと誘っちゃ駄目なの?」
「駄目ってわけじゃないけど……」
白石さんは純粋そうな目で、まっすぐにこっちを見てくる。信じていいのか? いや、まだわからない。見極めなくては……
「まぁ理由はあるんだけどね」
「やっぱりかよ!」
くそっ、騙されかけた! もしかして、って思った僕はどうせちょろいですよーだ。もう信じない。信じないぞ?騙されてなるものか。
「あはは! いい反応するね」
「ねぇ、蒼君。私のちょっとしたお願い聞いてくれる?」
「内容によるけど聞くだけ聞いてあげる。お願いって?」
なんか嫌な予感がするんだよなぁ……まぁ面倒くさそうだったら聞くだけ聞いて断ろうか。断れるかわからないけど。白石さん、押しが強そうだし。
「ありがと!お願いっていうのはね〜」
何を言われるんだろう? ちょっと緊張する。頼むから簡単にできることか、絶対にできないことでお願い。
「私に『恋』を教えて」
「…………へ?」
この日、この瞬間から僕の学校生活は変わっていった。それも、予想もしてなかった方向に。
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