閉鎖病棟

@misaki21

第1話 入院

 5週間にもなった精神科・閉鎖病棟での入院体験を記そうとして、5週なのだから全5話になるだろうと思ったのだが、メモの類が一切なく、また記憶もあやふやなので、出来る限り思い出せる範囲で書こうと思う。

 まずは入院に至る経緯から。

 簡単に言うと原因は単なる昼夜逆転生活。

 元々が睡眠障害で夜型なので昼夜逆転は私には日常なのだが、ここに相談支援員という方と訪問看護の方が絡み、事態が一気に大袈裟になった。

 お二人曰く、入院直前の私は普通ではない状態で(思考が止まる、キーボードが打てなくなる、など)、すぐにでも入院を、と急かされた。

 私はと言えば、まあリフレッシュも兼ねて3泊くらいの入院もいいかな、程度で話を進めていた。が、いざ入院となり主治医の出した診断書を見ると「3か月」とあり、これには驚いた。

 私事であれこれ忙しかった時期だったので、さすがにそれは困る、と食い下がったが入院当初の主治医は取り合ってくれなかった。まあ自身の診断結果なのだから当然だろうが。

 こうして人生初の、恐らく二度とはないであろう精神科・閉鎖病棟入りとなった。

 閉鎖病棟と言われてもピンとこないかもしれないが、簡単に言うと監獄である。

 至る所が施錠されており、終始看護師の監視の目があり、行動範囲は洗面関連を除けばホールと廊下のみ。

 看護師が看守のような態度なので益々、監獄と言うにふさわしい。

 1日のスケジュールは、OT・作業療法と3食の食事と、余った時間のテレビ鑑賞と言ったところ。

 作業療法とは文字通り、何かしらの作業をすることで病状を改善させるというものだが、私が初日にやったことと言えばコミックを読んで、塗り絵をした程度。果たしてこれが「療法」なのかと今でも思うが、疾患が重篤な方々は似たようなことをしていたので何かしらの効果があるのだろう。

 食事は病院食なだけあって、ひたすらに不味い。曰く栄養バランスを計算しており云々だが、一口も付けずにゴミ箱行きにしたメニューが幾つあっただろうか。

 そして自由時間とも言えるテレビ、新聞の時間。

 自室で寝ている方以外は、割とどうでもいいテレビに群がって、あれこれ言い合っていた。私はと言えば元来からテレビを観る習慣がないのだが自室に籠るのも億劫なのでテレビのあるホールに座っていた。

 ここで最初に仲良くなった患者の一人が登場。

 麻生さん(仮)はとても良く喋る方なのだが、問題はその内容。

 自分はCIAに盗聴されていて、行動も監視されている……さて、問題。こういった角度からの話題にどうリアクションするのが正解か。

 答えは、「そうなんですね」と笑顔で返す。

 麻生さんが喋り、私がリアクション、を10往復位した頃だったか、「聞き上手ですね」と言われた。

 そう、私は実はコミュニケーションスキルに長けていると自負しており、かなり特殊な方とでも意気投合できる自信があるのだ。

 麻生さんとは入院初日から2週間ほど仲良く過ごした。何故2週間かと言うと、疲れたから。CIA陰謀説を真顔で語る姿に相槌を打つのは予想外に体力が必要だった。

 こうして私は麻生さんと事実上の別れを告げて、食事の際の席を移動した。

 ざっくりとだが、これで1週目くらいの雰囲気は掴めるかと思う。

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