神引き出来ない、俺のダンジョン生活。

雨垂れ 空

ダンマスを初めて2カ月

第001話 黄色のヘルメット


 「それで……、うんうんOKーだね」


 「ブブゴッブ(了解っす)」


 「えっとーそこ、もっと広げてね」


 「「「ゴッブ!(うっす!)」」」


 溌剌はつらつとした返事をするゴブ達。


 頭には、『安全第一』の文言が刻まれた黄色のヘルメット。

 顔には、お面。

 各々に好みがあるようで、それぞれの大きさ・形・模様に違いがある。


 体は、動き易い2枚胴にまいどうの軽装鎧に篭手こて脛当すねたて

 そして両手には、ピッケル。


 露出している肌色は、茶系統。


 彼らは現在、汗だくになりがながら土木工事中。

 そしてそのような光景が周囲の至る所で見られる。


 そんな中を3Dマップこと『ダンマップ』を表示させながら巡回中な俺。


 服装は、グレーのフード付きのストレッチ性のあるのラフな格好。

 髪色は、赤の色味多めのブラッドオレンジ。

 そして少し長めの髪は、お団子ヘアにして纏めている。


 うーん。

 ここは、こんなもんかねー。


 ん!


 「あ、そこっ!気を付けてー」


 「「「ゴゴッブー!(イエッサー!)」」」


 それから皆に声を掛けながら慣れた足取りで、凸凹でこぼこの地面を歩く。


 因みに、ここは地下。

 でも、暗くはない。


 なぜならば、光量を作業に支障が出ない程度の明るさにしているからである。


 調整に使っているのは、光石こうせき光苔ひかりごけ、そして光草こうそう

 種類も豊富で光色も色々とあり、主に白・黄・橙色系統をチョイス。


 それと不規則に浮遊しては消え、またフワッと現れる色とりどりの光玉ひかりだま


 ストレス発散のためにも少し運動した方が良いと思い始めた巡回は、今や日課となりつつある。

 因みに、あそこの小高い丘の上がゴール。


   *

   *

   *


 20分後。

 丘周辺で作業しているゴブ達の様子も忘れず見て回り、問題なくゴールへ到着。


 そして改めて、丘の上から一望。

 巨大な空間が眼下に広がり、彩り豊かな光量が幻想的な光景を作り上げている。


 んー、綺麗。


 うんうん。

 やっぱり、良いね。

 見慣れてはいるが、いつ見ても心躍る。


 この空間の形は、ドーム型。

 広さは、20万㎡を少し超えた程度だから、東京ドーム4個分より大きめ。

 高さは、50m丁度なので、東京ドームよりやや低め。


 そして昼夜問わず、拡張工事の音とゴブ達の声で賑わっている。

 それがここでの日常。


 ゴブ達の作業も予定通りのようだ。

 満足できたので、自室へ戻ろうと地面にある六角形のマークを探す。

 サイズは、野球ボールほど。


 それに魔力を流すと転移陣が展開され、事前に登録されている他の転移陣を選びそこへ一瞬で行くことができる。

 因みに使用者制限を加えているので、誰でも使える訳ではない。

 それと俺が管理している空間こと領域でしか使用はできないが、便利アイテムであることは変わらないので、重宝しているアイテムの1つでもある。


 凸凹でむき出しの地面にめり込んだマークを確認。

 視認し易いように発光するタイプもあるが、敢えて地面に溶け込む同色を選んでいる。


 数メートル離れていても起動するので、あとは魔力を流すだけ。

 今風な便利なタッチレス。

 でも足でしっかり踏んで使用するゴブ達の所為で、擦り傷だらけである。


 使うなとは言うつもりはないので、諦めるしかない。


 まあ、致し方ないよね。

 形ある物はいつか壊れる。


 それよりも戻りましょ――


 ――ピーッ

 ――ピーーッ、ピッピーーッ

 ――ピーッ、ピーッ、ピーーッ


 ん!


 突然のかん高い警笛が次々に鳴る。

 これは、警戒担当のゴブ達から侵入者のお知らせ。


 すぐに3Dマップこと『ダンマップ』をタップして見易いように拡大。


 そしてそこには、ドームの頂点箇所から8個の赤点が降ってきている。

 その赤点の吹き出しには、


   ■グレー・ウルフ x3体

   ■ゴブリン x5体


 ゴブリンも落ちてきているが、赤点なのでうちのゴブではない。

 味方は青点なので、外周辺に住んでいる野良のゴブだろう。


 実はドームの頂上は、ぽっかりと半径4mの円形の穴が開いていて、日に何回も魔物が落ちてくる。

 なので馴染の魔物に対して、特別に慌てることはない。 

 逆に未遭遇の魔物の場合は、『ダンマップ』の侵入者通知をONオンにしているので、色々なお知らせが届きドギマギすることになる。


 今回は日常化している事態の1つであるため、そんなことにはならない。

 当然、対策済み。


 落下地点には、剣山のような針状の石柱が生えている。

 簡単に破壊されないように材質は黒硬石。

 空中で回避行動が出来る何か特技を持っていない限りは、ご臨終もしくは五体不満足の瀕死状態となってしまう。


 そしてマップ上の赤点が、時間を掛けずに予定調和の如く、次々と地面へ辿り着く。


 お!

 3体ほど即死を免れたようだ。

 生き残りは、ウルフ2体にゴブリン1体。


 しかしながら瀕死のようで、淡い赤色でゆっくり点滅。

 因みに他の死亡した魔物達は、先程の赤から灰色の点へ変化している。

 現時点で設定している色を整理すると、


   ・敵   :赤色

   ・瀕死  :淡い色で点滅

   ・死亡  :灰色

   ・味方  :青色

   ・それ以外:橙色


 そして死亡を意味する灰色の点が、1つ増える。

 その点の横に青点があることから、待機していたゴブ達に止めを刺されたのだろう。


 また1つ。


 そして最後の1つも。

 命の灯火が消え、全ての点が灰色へ。


 問題なくお亡くなりになったようだ。


 今のところ落ちて来た魔物の中で、ノーダメージのヤツはいない。

 いたらいたで困ることになるのだが。


 取り敢えず、問題が無くなり平常運転になったので、予定通り自室へ戻ることに。

 足元にある六角形のマークに魔力を流す。


 刹那、白色に発光する魔法陣が展開され、俺を包んでいく。


 そして、俺はドーム状の空間から姿を消すのであった。


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