第51話 死者蘇生
死んだ二人は恐らく従者だったのだろうが、俺の目の前で惨たらしい姿になっていた。
転がっている大盾の残骸から、女騎士はかつては美貌のタンクだったと分かる。彼女は鎧を身にまとい、大きな盾と槍を持っていたのだ。
彼女はくず貴族の冒険者を守るために魔物たちに立ち向かっていたが、多勢に無勢で命を奪われた。
だが、彼女たちの努力も虚しく、魔物たちに蹂躙されてしまった。彼女の鎧は斬り裂かれ、盾は砕かれ、その槍は折れた。
彼女の体は無残にも切り裂かれ、体全体が赤く染まった。片腕と片足はなくなり、片目も潰れた。
彼女の顔は苦痛に歪み、その口は無言の叫びに開いた。
彼女の死は実に酷いものだった。
俺は彼女の死に哀れみを感じその死に悲しみを感じた。
俺は理不尽な死に怒りを感じ、その死に冥福をと祈りを捧げた。
僧侶のおっさんもまた、同じように魔物たちに殺されていた。彼は白いローブを着て、杖を持っていた。貴族の冒険者に回復や補助の魔法をかけていたのだろう。彼はくず貴族の冒険者のために、自分の魔力を使い果たしていた。
回復ができないと叫んでいたが、その後断末魔の叫びに変わった。
だが、彼の魔法も効果がなく、魔物たちに襲われてしまった。彼のローブは引き裂かれ、杖は折られ、体は噛み砕かれた。彼の血により赤く染まり、その生命は消えた。
彼の首はねじ曲げられ、心臓は食いちぎられており、頭も半ば潰されており、彼の死も醜いものだった。
ダンジョンを後にしギルドへと戻った。
ギルドに着くとサキに今回の出来事について話すと、そのままギルドマスターへ報告を行った。
二人の従者の亡骸を目の前にし、ギルドマスターが深い眼差しでじっくりと俺を観察した後あきれたように言った。
「お前は死者蘇生ができるのだろう?何故やらない?」
その言葉に、俺は思わず息を飲んだ。そうだ、確かに俺はそのような能力を持っていたのだ。
考える暇もなく、俺はすぐに行動に移った。そう、俺は死者蘇生ができるのだ
手元にあった上級回復ポーションを用意し、漏斗を介して30を超える年齢と思われる僧侶のおっさんと、まだ16歳で若さ溢れる美人の女騎士の亡骸に注ぎ込んだ。
勿論女騎士には丁寧に!
そして皆が見守る中、俺は死者蘇生のスキルを発動させた。一瞬の静寂の後、場が光に満ち、静かなる力が二人の体を優しく、しかし力強く包み込む。それはまるで、生命の火を再び灯すかのようだった。また、欠損部位は復元しないも、上級ポーションにより傷はみるみる塞がる。
そして数分後、二人の胸がゆっくりと上下し始め、息を吹き返した。僧侶のおっさんは混乱しながらも感謝の言葉をつぶやき始め、1女騎士は目を開けた瞬間、何が起こったのかを理解できずに戸惑っていた。だが、その後すぐに彼女の表情も穏やかになり、静けさが戻ってきた。
その一部始終を見ていたサキは、ぽつりと呟いた。
「また女が増えるのね…」その声には、少し複雑な感情が混ざっていた。俺は何も言えずに、ただ苦笑いするしかなかった。
目覚めたおっさん、もとい、僧侶に聞いたら六階層でのスタンピードの原因は、不用意にモンスターハウスの部屋に踏み入れた貴族が引き起こしたものだった。子爵家の嫡男である彼は、侯爵家から妻を迎えるための名誉を求め、軽率な行動をとったのだ。
女騎士の方は胸が半ば見えているのでお着替えタイムだ。
因みにエリクサーを使うのはこの後。
死者蘇生と欠損修復の因果関係を調べるためだったが、欠損修復しなかったらエリクサーを使うつもりだったが、あまりに恰好が酷かったので先に整えることにした。
二人の従者は、男爵家の三男と四女で従兄弟同士だという。子爵家に従うことを余儀なくされ、命を落とす羽目になっていた。
二人は分家筋の別々の男爵家三男と四女。従兄弟同士だそうで、従者として子爵家に逆らえずやってきたとか。
その日、俺たちは新たな命を迎え入れ、新たなページを開いた。
僧侶のおっさんと美少女の女騎士、彼らもまた、これからの冒険において重要な役割を果たすことになるだろう。そして、そんな彼らを迎え入れた我々の前には、まだ見ぬ冒険が待ち受けていた。
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