第49話 無双する!
朝食後、エリスと共にサキをギルドに送り届けた。
そしてサキは通常の受付業務を後任に引き継いでいる最中だという。
今日でその引き継ぎ作業も終わるらしい。そんなわけで今日エリスは魔導書をじっくりと読んでもらう。
俺はその間に宿で取得後した【火炎強化】に慣れるために訓練場へと向かったのだ。
訓練場には誰もいなく、新たに習得したスキルを発動し、槍に火炎を纏わせた。
槍が炎に包まれるも、不思議と熱さはない。
おおっ!と感心しつつ、軽く的を突く。
すると的は瞬く間に燃え上がり、数秒で消し炭と化した。
次にエターナルアーチャーで生成した矢に火炎の魔力を纏わせ、ターゲットに向けて放った。
炎の矢は吸い込まれるように的に向かい、さくっと貫通してそのまま壁に突き刺さった。
次の瞬間、爆音が響き渡り、壁には大穴が開いてしまった。
慌てて駆け付たギルド職員の中にギルドマスターとサキもいた。
サキからのジト目を受けると、俺は申し訳なさに満ち、『すまない』という気持ちでいっぱいになった。
サキは特に、俺の方を呆れた目で見つめており、腰に手をやりため息をつく。
「修理代、どうするのよ」
ギルドマスターも睨んできた。
『あー、これはマズいことした・・・』
心の中でつぶやきながら、俺は頭をかきむしる。盗賊討伐で得たお金の大半が、今回の修繕費で飛んでいくことになりそうだ。
「ギルドマスター、サキ、本当にごめん。修理代は俺が出すよ。」
俺は誠心誠意謝罪した。二人はまだ不満そうな顔をしているが、俺が誠意を見せているのを理解してくれたようだ。
「責任を取るのは当然だ。ただ、今後はこのような事故が起こらないように十分注意してくれ。幸い怪我人がいないようだが、下手をしたら死人が出てもおかしくないぞ。まあお前さんはあれだがな」
ギルドマスターは厳しいが公平な目で俺を見て言った。
「はい、しっかりと自己管理し、二度とこのようなことがないようにします」
「次はもうちょっと考えてね。でもこれこそタケルなんだよね」
俺は固く約束したのもあり、サキは少しずつ顔を和らげるも、ため息交じりの言葉は俺の心を抉る。
これからは、スキルの使い方をもっと真剣に考え、周囲への影響を常に意識しながら行動しなければならないと痛感した。俺は心を新たにしようとしたが、ギルドマスターの言葉が耳に残った。
「何故ダンジョンで試さない? あそこはここと違って壊れないんだなぁ」
俺はその言葉に心を動かされた。確かに訓練場でやるよりも、ダンジョンの方が自分の力を存分に試すことが出来る。それにもし何かが壊れたとしても、ダンジョンなら自然に再生するだろうから、ギルドマスターの言う通りここでやるよりはるかに安全だ。
「そうか!よし、早速ダンジョンに行ってくるよ!」
「ちょっと待ちなさいよ!1人じゃ駄目だって!」
サキの制止の言葉も耳に入らず、俺は一人でダンジョンに向かった。この町にあるダンジョンは1階層がFランクで、そこから2階層ごとにランクが上がっていく。3階層はEランク、5階層でDランクになる。また、各階層にはボス部屋があり、そこを抜けると階段がある。
階段を降りると転移用の石板があり、触れるとこのダンジョンで触れたことがある転移石版の前に瞬間移動可能だ。
又は入り口にある転移石版を選ぶ。
また、サキからは3と4階層を主な狩り場としていたと聞いていたし、3から6階層が人気の狩り場だという。
俺は押さえられず、試したい一心からどんどん奥へと進む。1階層、2階層と進むにつれて、周囲の魔物の気配も強くなっていく。しかし、俺はそんなことには気を取られず、自分の力を試すことに集中した。
【火炎強化】を使った矢を放ち、魔物たちを一掃する。俺の矢は魔物たちに向けて炎の軌道を描き、その威力はダンジョンの壁にへばりついた魔物たちを粉々にするほどだ。炎は赤く燃え盛り、熱気は空気を揺らす。俺はその光景に満足感を覚えた。
あっ!もちろん気配を探り、人が近くにいない時にしかやらないよ!流石の俺でもそこはちゃんとやるぜ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます