第47話 閑話休題いや重大事案発生です!

 ギルドの賑やかな笑い声と酒の香りが漂う中、俺はエリスと共にギルド入口の外で待っていた。昼間の喧騒が少しずつ夜の落ち着きに変わっていく時間帯だ。

 数分もしないうちに俺たちの前にサキが姿を現した。彼女が身に纏っていたのは、ミニスカートで抜群のプロポーションを際立たせる服。その姿は、午前中のギルドで見た彼女とは別人のようで俺はエリスが足を踏んだのにも気が付かないほど特に胸の谷間に釘付けになっていた。


「お待たせぇ!」


 サキは軽いノリで現れ、俺の視線に気が付くもキラリと目を輝かせて笑う。


「さあ行くわよ!レッツゴー!」


 彼女は俺の腕を掴み、軽いノリで駆け出すように引っ張り始めた。

 その突然の変化に俺はただ、ついていくしかなかった。

 先の変貌にもまどったのは俺だけではなく、エリスも「えっ?何?どうして?」と呟きながら俺の服の裾を掴んでついてくる。


 ギルドの前を離れようとしたが、粗暴そうな冒険者たちがサキの姿に目を留めたのか、俺が絡まれる一悶着あった。


「オイてめえ!見ない顔のくせに俺たちのマドンナに何しやがるんだよ!」


 彼らは声を荒げた。


 サキはその場からサッと離れ、傍観者を決め込んで「あら大変ねぇ!頑張ってぇ」

 他人事のように呟くのみで、俺の対応を楽しんだ。


 俺が怒気をはらんだ視線の一瞥をその冒険者に投げると、相手は一変して「ひぃ〜!」と声を上げて逃げ出した。


 その後ろから聞こえるサキのケタケタとした笑い声はなぜか心地よかった。


「何だったのか?」


 俺が問うと、サキはすぐに戻ってきて俺の腕に組みついた。

 わざとらしく俺の腕を胸に押し付ける。その主張の激しい胸の感触を俺に提供するも、中々大きいんだなぁ。エリスとどっちが大きい?位にしか感じなかった。

 そしてエリスもその流れに乗り、俺のもう一方の腕を取った。

 俺は二人の美女の胸の感触に恥ずかしい気持ちでいっぱいだったが、否が応でも気分は上がる。


『これがリアル両手に花ってやつか!』


 しかし冷静で、今の俺はリア充なんだよなと思っていたが、まさかあのようなことになるとはこの時は気が付かなかった。


 俺たちは高級料理店【ル・シエル】へと向かった。

 店内は落ち着いた照明と静かなリュートのような楽器の奏でるクラシック風なのか民族音楽なのか、心地良い音楽で満たされていた。

 サキは店のメニューを見るなり、遠慮なく料理を注文し始めた。注文したのは熟成されたステーキ、新鮮なシーフードの盛り合わせ、トリュフのような物を使ったパスタに似たメイン、季節の野菜をふんだんに使用したサラダなどだ。


 食事は見た目にも美しく、味はそれを上回る絶品だった。

 昨日の食事は薄味で物足りなかったが、これくらいの料理があるなら、舌の肥えた日本人の俺でも行きていけると希望が持てた。


 食事の途中、俺はサキに今の態度について尋ねてみた。


「なあサキ、さっきからの様子がさ、ギルドにいる時とあまりにも違うが、どうなんだ?」


 彼女は少し悪戯っぽく目を細めた。


「当然、今のが本当のわたしよ。ギルドでのあの猫かぶりは、勿論仕事だから。あの手の女を嫌いな男はいないでしょ?嫌いになった?」


 そう聞き返してきた。


 俺は慌てて首を横に振る。そう言えばギルドマスターに遠慮のない悪態をついていたのは、地が出ていたのか。


「そんなことはない。ただ、新しい一面を見たんだ。お前に対する理解が深まったと感じたよ」


 無難に答えた。


「そう。ふふふ。さあお飲み物も来たし改めて乾杯しましょ。エリスさんの新たな装いと、これからの私達の未来にカンパ~イ!」


 俺はまさか酒を頼んでいるとは知らなかったが、飲みやすさからかなり飲んでしまった。


 そして、酒が進むにつれ酔いが回り、その夜は何とも言えない展開になった。

 夜中に気が付いたが、そこは宿の部屋で、エリスとサキとほとんど下着姿でベッドに寝転んでいた。二人のワガママボディが俺の目の前にある。

 いや、サキの胸に俺の顔が埋もれており、息苦しさから目が覚めたんだ。

 目覚めたは時は確かにサキの胸に顔を埋め、エリスの胸をガッツリ鷲掴みにしてその柔らかさを感じていた。


 肌の温もりや柔らかさを感じているのに、俺はの息子は男として何も感じない。

 まるで賢者のように冷静そのものだった。

 そう、一大事が発覚してしまったんだ。俺はなぜか・・・不能になっていた。

 寝ている2人の胸を触るも全く反応しなかった。

 この事実は、今は誰にも言えない。取りあえず、これは秘密にしておこうと心に決めた。こんな時に限って、体が反応しないなんて・・・。

 据え膳食わねば・・・多分今なら・・・そんなシチュエーションなのに・・・


 ただ、天を仰いで深いため息をついた。これからどうすればいいのか、俺にはさっぱりわからなかった。


 そっと落ちている服を2人に着させると、ベッドに寝かせて布団を掛ける。

 そして俺はソファーに横になることにした・・・

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