第41話 襲撃

 俺は槍を振り回し、ダンジョンの一階層の奥にあるボス部屋で巨大な骸骨の残骸を見てはしゃいだ。


 やっと倒したぞ、この野郎!この骸骨は大きく見せているだけのハリボテだったとは!

 気が付くのが少し遅かったが、大して強くはなかったな。

 だけど、ボーンナイトと聞いていたが、巨大化するなんて聞いていないぞ!


 エリスは俺のパートナーだ。彼女は魔法使いを目指す?俺はアーチャーだ。俺たちは冒険者としてダンジョンに挑んでいる。ダンジョンには貴重なアイテムや魔石、そして宝の山が眠っているからな。それを手に入れれば、俺の夢が叶うかもしれない。

 きれいな女性と世界を旅して回る、そんな自堕落な生活がしたい!


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 思った通りに行ければよいが、現実は厳しく泥臭い。

 彼女は奴隷であり、自身が稼がさないと開放できない。単独だと直ぐに死ぬだろう。だから強くなってもらわないとだ。

 俺が妄想に耽っているとやがてボスは小さくなり、人の大きさになったかとおもうと光って霧散し、ビー玉ほどの魔石と宝箱に姿を変えた。


「開けてみて!」


 俺はエリスに声をかけた。エリスは恐る恐る宝箱を開けたが、中にはオーブが入っていた。


「す、凄いです!このオーブは付与魔法を得ることができるという貴重なアイテムのはずですよ!

 タケル様の持っていたのとは違いますが、中々ドロップしないはずですよ!


「すげえな、これ。魔石は綺麗だしオーブは俺が使えるよな?これで念願の魔法も使えるようになるぞ!このオーブと魔道書を交換でよいか?このオーブはボスを倒した君のだけど、俺は魔道書は読めないからさ」


「私が魔道書を?良いのですか?」


 エリスは俺の手にオーブを渡した。俺は文字が読めないので、文字を覚えてからしか魔道書で魔法を覚えられない。

 それにはかなりの時間がかかる。それに引き換えオーブは割れば即時に身に付く。付与魔法とは言え立派な魔法だ。


 二人とも鑑定が使えないので、オーブに内包された魔法の種類は分からない。


「もちろんだよ。ほら、これがオーブか!。きれいだな!使うのが勿体ないけど、宿に戻ったらお互い魔法をゲットしようぜ!」


 俺はオーブをエリスに差し出した。


「はい。タケル様ありがとうございます。私も魔法を使えるならタケル様のお役に立てるようになれると思います!ありがとうございます!」


 エリスは俺に笑顔を見せた。


「俺が魔法を使える目処が立ったから気にするなよ。それにエリスが攻撃魔法を覚えたら戦力になるしな。何よりエリスが自由になる早道だろ?お互い良いことだしな」


 俺は照れくさそうに言ったが、やはりエリスの首輪を見て怒りと悲しみを感じた。


 俺はエリスに約束した。俺と一緒に冒険をし、稼いだ金は人数割。使うアイテムは不公平の無いように配慮しながら配分すると。


 俺はエリスに惹かれていった。

 容姿は残念だし、その、話から多分エッチなことができない。

 将来的に結婚したとしても子を産めない体になっていると言っていたから、ちゃんとした女の人を(体が)、例えばサキのような女性と結ばれてくださいと言っていた。


 彼女も俺に好意を持ってくれたと思う。だが、俺は奴隷の主人だったし、体の関係でそういう間柄、つまり恋愛なんてできるはずがない。

 だから俺は彼女に自由になってほしかった。そして火傷と体を直してやりたい。


「コホン。流石に初めてのダンジョンで疲れたろ?ボス部屋の先にある階段を降りたら二階層だろ?そこには転移石があるはずだから、それで今日は帰ろうか」


「タケル様、かしこまりました」


 そうして俺たちはボスを倒した後に開いた扉からボス部屋を出ると、階段を下った。


 その先に二階層の奥へと続く道があり、反対側を見るとダンジョン入り口にあったのと同じような石板が見えた。


「あれが石板だな。よし、帰ろうか」


 俺は石板に向け歩き出したが、その時俺たちの背後から何者かが襲いかかってきた。


「きゃっ!」


 エリスは気が付かずもろに攻撃をくらい、俺も反応が遅れ身を翻すのが精一杯だった。

 攻撃を食らうも、着ている戦闘服がその刃を阻んだ。

 しかしエリスは背中から左胸に向かって剣で刺されてしまった。


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