第31話 アイテムとステータス

 夕食は薄味で物足りなかった。日本人である俺は舌が肥えていたから、もっと味の濃いものが食べたかった。

 骨付き肉をかじりながらエリスの頬についた食べかすを拭うも、彼女は目を輝かせながら本当に食べていいのかと何度も聞いてきた。

 俺は彼女にではなく、奴隷がこのような状態に陥る社会に対しイライラしながら、野菜をエリスの口に押し込んだ。


「食べなよ」


 エリスは奴隷だったから、ろくなものを食べたことがないらしい。美味しいと言って涙を流す姿に、俺は胸が痛んだ。そっと涙を拭ってやった。まさに餌付けなのだが、顔の火傷のせいで彼女の口は思うように動かない。だから俺が肉を細かく切り、一口サイズにしたのを食べさせたが、それでも汁が頬についてしまったりする。


 エリスは美味しそうに涙を流しながら食べていて、とてもではないが薄味だと文句を言えなかった。笑顔で食べる彼女を見て、俺も少し笑みを浮かべる。


 ・

 ・

 ・


「すみませんでした!」


 食べ終わった時にハッとなったエリスが突然謝罪をした。


「気にするなよ。エリスが美味しそうに食べる姿が、俺の一番のご馳走だから。美味しかったか?」


「はい。こんなに美味しいものは初めてです。子供の頃のことはあまり覚えていないので、もしかしたら美味しいものを食べていたかもしれませんが」


「これからはもっと美味しいものを食べさせてやるよ」


「はい!楽しみにしています」


 部屋に戻ると、俺は異空間収納カバンから商隊の荷物を出した。商会に渡す分を普通の背嚢に詰め替えなきゃならなかった。二人分の背嚢以上は、壊れていたり持ち出せなかったと言うしかなかった。常識の範囲で仕分けた。


 その後、山の中で宝箱の中から得たアイテムを見た。今まで確認する余裕がなくて、使わないものは全部カバンに入れていた。アイテムは以下のようなものだった。


 1. 魔導書(5冊):使うと新しい魔法が覚えられる。使ったら文字が消えて、白紙になる。

 2. 白のスキルオーブ(4個):割ると基本的なスキルが身につく。

 3. 青のスキルオーブ(3個):割ると上級スキルが身につく。

 4. 金のスキルオーブ(2個):割るとユニークスキルが身につく。

 5. 虹色のスキルオーブ(1個):割ると自分が望むユニークスキルが身につく。

 6. 金色のポーション【エリクサー】(20本、うち1本使用済):飲むとHPやMPが回復し、ステータス異常も治る。欠損部位や古傷も治る。

 7. 黒竜衣:ブラックドドラゴンの革でできた戦闘服。物理と魔法に対して高い防御力がある。重くなくてしなやか。温度調整能力もあって、四季を問わず着られる

 8. クリニカルブーツ:マジックブーツの一種。少し移動速度が上がる。温度調整や防臭機能もある。


 俺はこれらのアイテムをテーブルに並べて眺めたが、さっぱり分からなかった。俺は異世界の文字が読めなかったし、それにこれらが何なのかもよくわからなかった。そこでエリスに聞いてみた。7番と8番は得たその場で着替えており、今は俺の装備品だ。


「す、すごいです!どれも貴重なものですよ!魔導書はお金を出せば買えますが、オーブはどれも普通の人が一生働いても買えないくらい高いですよ」


 エリスは目を白黒させて答えた。彼女は鑑定持ちに見てもらわないと分からないと言ったが、だいたいの性質は教えてくれた。魔導書は魔法を覚えるのに便利だし、オーブはスキルを得るのに役立つということだった。オーブは割ると中に入っているスキルが身につくのだが、鑑定しないと何が入っているのか分からない。また、金色のポーションはよくわからなかったが、後にエリクサーという名前の万能薬だと分かった。


「ありがとう。じゃあ、魔導書はエリスが使ってみないか?」


 俺はエリスに聞いた。エリスにもアイテムを使って欲いし、彼女に感謝していたし、力にもなりたかった。


「い、いえ、それはできません。そんな貴重なものを私のような奴隷が使うなんて、とんでもないです。タケル様が使われるべきです」


 エリスは慌てて断った奴隷としての考えが拭えないのだ。

 ただ、実際は未鑑定の物は使えないという意味だった。無駄になる可能性があるから、鑑定をしてからの話だ。


 そんな話をしていたが、本格的に眠くなったので、出したアイテムをカバンにしまおうと思ったが、振り向いた時に金のオーブに腕が当たってしまい、テーブルから落ちた。


 あっ!と声を上げて手を伸ばしたが、間に合わなかった。オーブは床に落ちて、パキンと音を立てて割れた。正確には慌てた俺が足元に落ちていた布で足を滑らせ、オーブの上に倒れ込んで割ってしまったんだ。


『永遠の射手「エターナルアーチャー」を取得しました』


 そのとき、スキル取得の声が頭の中に響いた。俺は驚いてオーブの破片を見た。金色のオーブだった。ユニークスキルが入っていたのかもしれない。それを割ってしまったのかと思うと、悔しくなった。でも、エターナルアーチャーというのは弓系のスキルのようだった。俺は弓を使うのが好きだったから、それは嬉しかった。


「タケル様!」


「あいててて、って痛くないな!。エターナルなんちゃらというのを取得したようだな」


 俺はエリスの心配そうな声に答えた。彼女は俺の手を取って立ち上がらせてくれた。俺はスキルの詳細を確認したかったが、それは明日にしようと思い寝ることにした。


 しかし、エリスが床で寝ようとするのを見て、俺は彼女にベッドでの添い寝を頼んだんだ。


「俺は一人だとなかなか寝れないんだ。一緒に寝てくれないか。金はしっかり払ってるんだし、君が床で寝る必要なんてないからな。」


 そう言って、優しく彼女をベッドに誘い、抱き枕のようにして眠りについた。


 俺が陽気に振る舞っているのはウィッシュの反動で、心のブレーキと言うか、枷がなくなっていたからだ。また、無意識から人肌が恋しくなっているので、純粋な気持ちで一緒に寝てほしいだけだ。エリスは醜い自分が俺に必要とされているのに喜びを感じ、俺の温もりに包まれることで心地よさを感じていたんだろう。そのようなつぶやきが聞こえてくる。


 やがて俺たちは疲れもあり、静かな夜の中で、穏やかに呼吸を合わせながら安らかに眠りについた。


 ・

 ・

 ・


 時間は少し戻りベッドに横になる寝る前に俺はステータスを見ていた。といっても自分のスマホを見つめていたのだ。異世界から召喚された時に身に付けていた物もあり、スマホも一緒に持っていたようだ。俺はスマホを使えばライブラリーカードは別に、ステータスが見えることを知っていたが、これまで見ていなかった。


 ライブラリーカードは俺にとって名前やレベル、スキルなどを表示することができる不思議なカードだった。

 こういうのを見ると異世界なんだなぁとつくづく思い、今後に期待が膨らむぞ!


 そしてスマホをじっくり見ると、どうやら破壊不可オブジェクトに変質しており、更に荷物の中に死亡者のスマホが二台あったことに気づいた。また、スマホは魔力で動くようだった。

 設定項目を覗くと自動と手動による魔力チャージの設定項目があったからだ。


 因みにスマホではライブラリーカードに記載された内容の他、パラメーターが見える。そして俺ことタケルのライブラリーカードにはこう書かれていることを確認した。


 名前 タケル

 年齢 17歳

 レベル 300

 職業 無職

 ギフト:ウイッシュ

 スキル:コンセントレーション、大器晩成、エターナルアーチャー



 また、スマホで確認できた本当のステータスはこうだ。

 見えていなかった称号が見えている?ギルドマスターが俺を異世界人と分かったのは、ライブラリーカードには表示されないこの称号を見る手立てがあったのかな?そうか!そう言う鑑定や看破系のスキル持ちだな!うん。



 名前 タケル

 年齢 17歳

 レベル 300

 職業 無職

 称号 異世界召喚者、魔物を駆逐する者

 ギフト:ウイッシュ

 スキル:コンセントレーション、大器晩成、エターナルアーチャー

 HP  3009

 MP 2655

 STR 1542

 AGI 2874

 DEX 1923

 INT 1923


 また、エリスのはこうだ(パーティーメンバーや、配下の分は見える)



 名前 エリス

 年齢 16歳

 職業 奴隷

 レベル 1

 称号 タケルの奴隷

 ギフト:なし

 スキル:空間認識

 HP 35

 MP 30

 STR 32

 AGI 43

 DEX 60

 INT 65

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る