第18話 ウィッシュ無双

 異世界の城では、召喚されし者たちの犠牲を見越した冷酷な計画が進められていた。彼らが倒れれば、召喚枠はリセットされ、まるで棋の駒を動かすかのような策略が進む中、残酷な運命がシズクたちにも迫っていた。洞窟内に足を踏み入れると、岩壁から滴る水の音が不気味なリズムを刻んだ。サイクロプスが入口付近に現れたことに誰も気が付かなかったのは、見張りを立てなければと誰も思いつかなかったからだ。



【シズク視点】


 夕暮れが迫る中、私とアーチェリー部の女子3人は石灰岩の洞窟の入口に立ち尽くしていた。


 彼女らの緊張感は、潮風に吹かれるように強まっていた。その正確無比な矢の舞いで、勢い盛んな男子たちにさえ刺激を与えていたわ。

 彼らもまた、自ら武勲を重ねようと胸に秘めつつ、力強い足取りで戦場を駆け巡っていた。ここは魔物たちが跋扈する過酷な異世界で、私たちは時に兵士から逃れ、時には角笛が選手交代を告げるかのような緊迫感の中で、互いを支えながら闘い続けた。


 しかし、私たちが一時の避難所として見つけた洞窟は、湿った空気がふわりと私たちの顔に触れてまとわりつき、圧迫感が強いうえに酸欠の恐怖に包まれた暗がりだった。


 女子の半数は体力の限界から座って休むしかなかった。

 息苦しい闇の中で、恐怖が隊列を揺るがせた。

 男子は、【男が女を守る】と息巻き始め、私にもっと良い武器をお願いし、戦力を増強していた。


 アーチェリー部員たちは力強く矢を放ち、魔物に決定的な打撃を与えていたけど、恐怖に怯える女子たちの存在も忘れてはならない。

 彼女らの震える手は無力さを象徴し、額には冷たい汗が浮かんでいたのだから。


 異世界の夕暮れは、残酷な現実を隠すことなく、赤く染まっていた。

 私もそうだけど、アーチェリー部の女子たちもその日の戦いに疲れ果て、洞窟の入口に集まっていたわ。

 彼女たちの顔には、疲労と緊張が混じり合っていたの。


「大丈夫だよね、シズク?」


 リナが心配そうに尋ねる。

 私は答えを持ち合わせていなくただ頷くことしかできなかった。


 途中の休憩時、私はリナと話し、お互いをリナ、シズクと呼ぶように話していたの。

 今の状況で私の次に強いリナを何かと頼りにしたかったのと、タケルのことで申し訳ない気持ちで一杯だったから。

 普段の様子を見ていれば、リナがタケルのことを好きなのはよく分かったから・・・私も好きなのよ・・・


 共通の人を好きだというのかな?途中から妙に気が合いざっくばらんな話をする仲になっていたわ。


 洞窟内へと足を踏み入れると、そこは湿った空気で充満されており、その壁からは水が滴り落ちていた。

 しかし、私たちにとって、この洞窟は一時の安息を意味していた。

 彼女たちの矢は、多くの魔物を倒していたけど、夜は私たちにとって危険がいっぱいだった。


「もう少しで夜が来る。しっかり警戒しよう」


 私は言い、特に男子たちは肯く。


 しかし、その安息は長くは続かなかった。岩壁に反響する重々しい足音。

 それは、サイクロプスの巨体が洞窟の入り口を塞ぐ音だった。

 その音に私たちの緊張は一気に最高潮に達し、手に持つ剣や弓が震えた。


 来ないでと願うも、匂いから獲物がいるとこちらに来るのが分かる。


「来るな!来るな!」


 リナが叫ぶと弓を引き絞り、矢を放つ。しかし、その矢はサイクロプスの厚い皮膚を貫くことができなかった。

 レベルが低いためダメージが入らない。


 サイクロプスは恐ろしい咆哮を上げながら、私たちに襲いかかったわ。 男子たちは勇敢にもその巨体に立ち向かったけど、次々と吹き飛ばされ、意識を失っていった。

 女子たちは怯えながらも、最後の力を振り絞って抵抗した。

 私一人が孤軍奮闘する形で、じり貧だった。

 一体だけなら倒せたと思うけど、複数の巨人がおり、私は何とか一体を倒したけど、それだけだった。


「助けて、天川先輩!」


 リナの叫び声が洞窟内に響く。みやちゃんと私は必死でリナの手を引き、サイクロプスの手から逃れようとした。


 その時、ほとんどの女子は捕まり服は引き裂かれ、肌が露になって洞窟の奥へと連れ込まれたわ。

 何をしようとしているのかすぐに分かったわ。そう、おぞましいことよ。


 捕まった女子は必死に抵抗するもどうにもならず、手足をバタバタさせ、悲鳴を上げている。


「こんなところで私たちは終われない!最後まで抵抗するのよ!」


 私は強く叫び、再び剣を構えリナを捕まえたサイクロプスを倒したわ。その後リナの放った矢が一体のサイクロプスの目を射抜き、一瞬の隙を作った。


 しかしながら、結局3人とも大勢のサイクロプスに囲まれなす術もなく捕まり、服は引きちぎられ、孕ませんと下半身が露にされていく。


 嫌よ!こんなところで純潔を散らすなんて!

 そしてサイクロプスが覆い被さり、その純潔が散らされようとし、私は涙を流しながら必死に抵抗していた。


 後で知ったけれども、サイクロプスのオスは人の女を孕ませようとし、男は情け容赦なく殺すという性質。そのその巨躯に抗うことができず、私たちもその巨大な手に捕まり、洞窟の奥へと引きずられていき、まさに純潔が散る数秒前、私たちの悲鳴が闇に呑まれそうになったその時、空には突如として謎の魔方陣が現れたわ。洞窟だから見えなかったけど。


 その瞬間、空が光に包まれ神秘的な魔方陣が全てのサイクロプスの頭上に現れた。

【ウイッシュ】という声がどこからともなく聞こえた気がしたわ。


 サイクロプス達は女子を組伏せたまま、その魔方陣を見て死を悟り咆哮したわ。


 魔方陣から放たれる光がサイクロプスを包み込み、一瞬で灰と化し、洞窟には再び静寂が戻った。


 私とリナはお互いの手を握りしめながら、その奇跡に涙を流した。

 みっちゃんもアーチェリー部の2人とほとんど裸で抱き合っていたわ。


「生きていて良かった...」


 リナがつぶやくと、私も力強くうなずく。


「うん、生きていて良かった。私危ないところだったけど、シズクは?」


「うん。私も間一髪だったけどタケルに守られたわ!見たところやられた子は・・・一部いたようね」


 私たちの周りには、倒れている男子たちがいた。一部犯されて子種を注がれた女子もいたけど、幸い皆生きていたわ。

 経験のない女子は必死に抵抗し、経験のある女子は殺されるよりはと魔物を受け入れた違いが出たようね。

 それよりも、男子を助ける前に身なりを整えなきゃ。


「3人が子種を注がれたようよ。もう処置はしたけど、幸い?経験ある子だったようね」


 みやちゃんが確認して回った結果だった。

 言葉を濁しているが・・・やっぱりやられちゃった子もいたんだ。

 みやちゃんはどうなのかな?

 ニッコリしているから貞操は守れたようね。


 私は忙しかった。

 サイクロプスの魔石をポイントに変え、皆の服をポチったから。

 サイズはなんとかするしかないけど、同じのを人数分まとめ買いするのは一度の買い物扱いのようね。


 その後、回復ポーションを取り出し、男子の唇にそっと滴らせた。奇跡の薬がゆっくりと作用し始め、男子たちは一人また一人と意識を取り戻した。もちろん女子派遣知人の服に皆着替えたのは言う迄も無いわ。


「まだ戦いは続くけど、今はただ、仲間と一緒にいられることに感謝しよう」


 私はそう思った。そして、ミヤちゃんの掛け声で皆再び立ち上がり、過酷な宿命の地を歩んでいく準備を整えたわ。


「タケル先輩!あなたのお陰で私の純潔は守られました。まだ生きているんですね!会いたいです・・・」


 私はリナの呟きに、嫉妬と敬意を感じながら、タケルのことを思い、彼がなぜこんなにも彼女たちを想ってくれるのか、なぜそんなにも強い力を持っているのか?


 そしてなぜ遠くにいるのかを考えたわ。


 英雄と犠牲者の間で揺れる異世界で、私たちは新たな希望を胸に、それぞれの経験を糧に、また一歩前進したわ。


 節理あるアーチェリーの技が魔物を討ち、時にはゆるやかな連携がチーム全員を支える新たな世界の物語が、ここに展開されていくのだった。

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