ぬくもりを欲するくノ一

喜島 塔

序章「その姿、ハヤブサの如し」

 ―― 早朝のスクランブル交差点


 通勤通学途中の多くの人々が行き交う横断歩道に躊躇なく突進する居眠り運転の乗用車……


 人々の悲鳴が響き渡る……


「これは大惨事になる!」

 と、誰しもが思った瞬間、ハヤブサのような影が現れ、瞬時に数十人の人々を抱え込みながら宙高く飛び上がったかと思うと、ハヤブサは、同時に、高速で交差点に突入する乗用車のタイヤめがけてマキビシのようなものをシュシュッと放ちながら抱え込んだ人々を安全な場所まで移動させ、その後、煙幕のようなもので人々の目を晦まし、姿を消した。


 その一部始終を撮影していた若者の動画には、薄っすらとだが、信じられない姿が映っていた。


「く……くノ一?」

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