第二十五話 人生ゲーム!


「その流れでOKしちゃったの!?」


諒花と一緒に下校中、僕は、初のバイト終わりに、諒花パパに言われ、弟の草太くんの勉強を見ることになったという経緯を説明していた。


「うん。だから今日もお邪魔します」


「大丈夫?無理やり押し付けられたでしょ?断っていいんだよ?ていうか断ろう。嫌でしょ?」


「いや、大丈夫だよ。中学生教えるくらいならできるし、僕別に毎日暇だから」


「まぁ、渡くんがいいならいいけどさ。嫌だったら父親の言うことなんて、全然断っていいからね」


諒花はそうは言うが、僕にとっては、嫌だったとしても断りずらかった。その理由は簡単で、諒花の親だからだ。どうしてもいいように見られたい意識が働いてしまう。


「あっ、そうそう」


「ん?」


「来週、ウチの高校で文化祭あるんだけど来る?」


「男子が行ってもいいの?」


「いいよ、全然」


「じゃあ行こうかな。何やるの?」


「それは、当日のお楽しみだよ」

彼女は笑ってそう言った。


古賀家に着き、2階の手前から二番目の部屋で、僕は早速、諒花の弟である、古賀 草太くん、中学一年生の勉強を教えることになった。


「草太くんは、どの教科を教えて欲しいのかな?」


勉強机に座る草太くんにそう問いかける。


「うーん、、、」


「草太、はっきり言わないと!」


何故か諒花も一緒にこの部屋にいた。


「いやぁ、全教科教えてもらいたいというか」

草太君は頭を掻きながらそう答える。


「どれかひとつにしなさい。渡くん困るでしょ」


「うーん、じゃあ国語で」


「国語か。草太くんは、国語嫌いなの?」

僕はそう聞いた。


「まぁ好きでは無いかも」


国語は僕の得意分野だ。国語の醍醐味は、物語の奥深さだ。国語をつまらないと思うのは、それを味わえてないからである。


「国語は物語を読み解ければ、全て問題文に答えは乗ってることになるんだよね。そうなると面白くなさそうに聞こえるけど、その中にも、込められた筆者の想いとか、事象や時代に対する考えやその時の感情が込められている作品もあって、それを照らし合わせると、自分と通ずるものがあったり、新しい発見があったりして面白いんだよ」


「なるほど...」


「流石は、渡くんだ、、興味の引かせ方が上手い!」


「それでこの問題なんだけど、筆者は親に愛されない人生を歩んできて、こういう想いで書いているらしいんだよね。それでその時の世間は戦争で厳しい状況だったから、主人公が戦争に巻き込まれ、こういう悲しい結末にしてる。でこのシーンは、一見、ただ物を渡すだけのシーンなんだけど、主人公の立場と、バックボーン、そしてこの動作描写と風景描写から、主人公の親への確執が目に見えて分かるシーンなんだよ。そのなんとも言えない微妙な感情を表している。そうなるとここの答えは、分かってくるよね」


「その前の一文のこのセリフ?」


そう言って草太くんは、一文を指した。正解だった。


「そう。そういった感じで、今までの文章から答えを読み解けばいいだけなんだよね」


「す、、すごい。ウチ、人に教えるのほんと不得意だから尊敬するわ...!」


「いや、大したことはしてないよ。飲み込みの早い草太くんが凄いだけで、そこは諒花譲りなのかな」


「またまたぁ!」


「あの、お姉ちゃんとどう言った関係で?」


諒花とやり取りをしていると、草太くんがそう聞いてきた。


僕は、ギクッとした。


「ああ~えーっと、渡くんとは、一応付き合ってる」


諒花がそう切り出した。


「えっと、改めて、古賀 諒花さんと付き合ってる、中森 渡です」


「そ、そんな改まらなくてもいいよ、弟だし」


諒花がそう言った後、子供部屋のドアが開いた。


「お菓子とお茶持ってきたわよ〜」

諒花ママだった。


「あら?今は休憩タイムなの?」


「うん。ママ、タイミングいい!」

諒花は親指を立てた。


「そう!良かったわ。これ食べて食べて。渡くんも」

そう言って諒花ママが勧めたのは、クッキーと紅茶だ。


「休憩時間暇だしこれして遊ぶ?」

諒花は、そう言って人生ゲームを出してきた。


「おーい、遊ぶの?なら、私も混ぜてー」


諒花ママが戻ったあと、話を聞きつけて、透さんが、来ていた。


「あれ?お姉ちゃんまた人生ゲームやるの?」

と草太くん。

「諒花姉ちゃんはそれ好きだね」

透さんもそう言った。


諒花はよく人生ゲームをやるらしかった。


「でも、僕は、初めてかな人生ゲーム」


やる相手、いなかったし。


「ま、マジ!?じゃあちょうどいいね!面白いよ!人生ゲーム!」


人生ゲームは、とりあえず所持金というものがあってスタートらしい。

人生ゲームと言うだけあって、本当に生まれたところから始まるんだな。


「最初に、ルール説明するね。ルーレットを回して、出た目だけ進んでそのすごろくのマスのイベントが起きます。それを進めて最後に一番総資産の高い人が勝ち。最初に配られるお金は100万円ですだって」


「100万!?赤ちゃんなのに100万貰えるの!?」


僕は驚いた。


赤ちゃんの頃にもう貯金が100万あるなんて、逆に先行き不安だ。


「やばいよね。現実だったら」

諒花はそう言って笑った。


そして、早速人生ゲームが始まった。

まず、ルーレットで順番を決めるところからだ。


出た目は、6。

諒花が4 草太くんが8 透さんが3で、僕は2番目となった。


「よし、、僕からか、えいっ!」

1番目の草太くんが、ルーレットを勢いよく回す。


出た目は5。5マスすごろくを進めると、良イベントマスに止まった。


「赤ちゃんなのにおしゃべりの成長が早い知的センス・ユーモアセンスプラス5だって!」


諒花がイベントの内容を読み上げた。


なるほど、色々なパラメータがあるわけだな。知能や運動能力、センスや運など結構種類が多く、これが、後々のイベントで関わってくるっぽい。


それにしてもイベントは、奇想天外なものが多く、面白かった。

人生ゲームはあっという間に、赤ちゃんから小学校、中学校、そして高校卒業イベントになっていた。

ここでパラメータに応じて、これからの大人時代の職業とキャリアを選択できる。


「僕は、プロ野球選手になろうかな。パラメーター的にも、野球が一番いいみたいだし」

僕は、最終的に、運動パラメータが一番高く、スポーツ選手への道を進んだ。プロ野球を選んだのは一番年俸が高く、人生ゲームに勝つためだ。


「ウチは、アナウンサーかな」

諒花は言語スキルが高く、アナウンサーにした。


「僕は、お笑い芸人かなぁ、安定してないけど運スキル高いし」


「私は、薬剤師になるために、理系の大学院目指すルートかな」


草太くんは、お笑い芸人、透さんは、理系と知能スキルが高く、薬剤師を目指すらしい。


「ここから恋愛イベントマスが続くみたいだね」


「私は高校生活で踏んだから、今恋人いるし関係ないな」


透さんはそう言った。


まず、諒花が、恋愛イベントマスに止まることに成功した。


「現時点で一番収入の高いプレーヤーと結婚!?」


え、それってつまり。


僕じゃん!


「わ、渡くんと結婚か!よろしくね渡くん」


「えっと、う、うん」


僕と諒花は照れながらそう言葉を交わした。何だこの空気。2人からジトりと見られてそうで気まずい。


「えーっと結婚したプレーヤーに御祝儀だって!1000万円!」


「なるほど、おめでとう諒花姉さん」


薬剤師になった透さんはポイッと御祝儀の1000万を諒花に渡した。


「じゃあ僕も」

僕も野球選手として活躍していたので、1000万円は余裕だった(※結婚相手でも恋愛マスに止まった人に御祝儀をあげる仕様)


「え、えっとぉ、、、待ってもらっていいですか?」


「えぇ?草太、払えないのぉ?」


しかし、草太くんだけは、まだお笑い芸人として活躍しておらず、諒花に借金することになってしまった。


なんだか少し可哀想だった。


人生ゲームはその後も続いていき、色んなイベントがあった。そのイベント一つ一つに一喜一憂して、僕達は大いに盛り上がった。


最終結果、僕が優勝した。プロ野球選手として活躍し、メジャー挑戦もした。それにより、多額の契約金だけでなく、スポンサーなどのお金もガッポガッポだったからだ。


次に、透さんだ。

薬剤師になることに成功し、高校時代に付き合った恋人とも結婚する円満ルートだ。


その次は、諒花

僕と結婚し、子供も生まれたことにより、アナウンサーを辞めたので、そこまでお金は稼げなかった。


そして最下位は草太くんだった。

運スキルが働き、お笑い芸人としてエムワンに優勝するものの、その後は、何故か不運続きで、ギャンブルに失敗したり、いざこざでコンビ解散したり、一生独り身で、周りの御祝儀の金だけ飛んでったりと散々だった。


「うわぁー、悔しい」

草太くんは、その結果に声を上げた。


「草太残念だったね」

透さんがそう言った。


「でも、なんだかんだまぁ楽しかったよ」

草太くんは最下位だけどそう言った。

「そうだね!」

諒花が頷いた。

「渡くんも楽しかった?」

「うん」

僕も、人生初の人生ゲームは楽しかった。

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