第二十三話 お家デート?
『今度、ウチ来ない?』
カラオケから数日後、諒花からこんなRISEが届いた。その後やりとりして、今日の下校後、僕は、諒花の家に初めて足を踏み入れることになっていた。
「なんか緊張するなぁ、、」
諒花の最寄り駅である、百枝駅に降りて、ゆっくりと歩きながら彼女はそんな声を漏らした。
「お邪魔する僕の方も緊張してるよ...」
多分、僕の方が諒花よりガッチガチに緊張してると思った。
家の人にどんな挨拶していいのやらそこが一番の緊張ポイントだった。
「大丈夫、親は恐らく家にいないから!仕事で!」
「そ、そっか。でも不安だなぁ」
「まぁ初めてだからね。ドキドキするよね」
互いに胸の鼓動を早め、ソワソワとしながら浮遊するような感覚で歩いていると、もう諒花の家に着いていた。そして、僕はその家を見て驚いた。
「家、塾なの?」
「うん。個別指導塾だね。個人だから親が経営してる」
「す、凄い、だからこんな家が大きいんだ」
「1階が塾になってるからね。2階と3階はウチらが住んでるんだよ」
諒花の家は、三階建てで大きく、庭もあってそれはそれは立派な豪邸とも言える家だった。広い庭には、自転車がいっぱい止まっていた。恐らく、塾の生徒たちのものだろう。
僕達は塾になっている一階の玄関の裏に周り、裏玄関へ移動した。
「そ、それじゃあ開けるよ?」
「う、うん」
諒花が家の玄関のドアノブに手をかけた瞬間、僕の心臓の早鐘現象はピークを迎えた。ドクドクと心臓の鼓動が激しくて、痛い。
「お、おおおお邪魔します...」
「ただいまー」
家の中は、綺麗で、土間も砂汚れもなく、靴も綺麗に整頓されているし、靴箱も掃除が生き通っている。諒花が廊下の灯りをつけると、廊下の床は光が反射するほどツヤがあった。
「ほら?返事も帰ってこないし、誰もいないでしょ?」
「う、うん」
「誰か来る前に、ウチの部屋に早く上がっちゃお」
「わ、分かった」
僕は靴を早く履き替え、靴箱に入れず、揃えておき、諒花について行った。
「ウチの部屋は2階の一番奥の部屋なの。手前が妹と弟の部屋で3階が親の部屋かな」
「なるほど、諒花、兄弟いたんだ」
「あれ?言ってなかったっけ」
「知らなかった」
「そっかそっか。二つ下の妹と四つ下の弟がいるんだよね」
「なるほど」
「じゃあ、部屋開けるね、入って」
「お、おじゃまします」
そう会話しているうちに、諒花の部屋についた。
諒花に促され、入ると、綺麗で部屋全体の雰囲気はとても爽やかでライトブルーを基調とする部屋の色だった。
生活感も少しありながら、ぬいぐるみや可愛いクッションなど、女の子らしさもあり、いい匂いもして...
おいおい、女の子の部屋に入って匂いの感想を思わず脳内で語っちゃうのはキモイぞ僕。やめよう。
「適当にクッションの上座っといて、ちょっと飲みもん取ってくるから!」
彼女はそう言って、扉を閉めて飲み物を取りに言った。
僕は、言われた通りに丸い机の周りに置かれたクッションに適当に座る。
そして部屋の中をぐるっと見渡した。
テレビが置かれていて、その下にゲーム機があったり、本棚には、映画や少女漫画が置かれていたり、意外と普通の部屋なんだよな。ギャルぽいすごい何かとか、なんかやばいものとかは置いてない。等身大の女子高生の部屋といった感じだった。
「お持たせ~」
諒花は、お菓子とジュースの入ったコップが乗ったお盆を持ってきて、それを机に置いた。
「あ、ありがとう!」
「いえいえ、ウチの部屋でなんか面白いもの見つけた?」
「ゲーム機あるんだなって」
「うん。あるよ~。暇だし一緒にやる?」
「お、やるやる!」
ゲームは僕の得意分野だし、なんでもどんと来い!といった感じだった。
「それじゃあねぇ。このゲームやろ!」
「これは?」
「ファッションデザイナーバトルゲーム!」
ガガガガーン!ファッションデザイナーバトルゲームゥ!?僕のデータにないぞ!?
「これ戦うゲームなの?」
「うん。ファッションでね。ちなみにウチプレイ時間500時間だから負けないよ」
「えぇ...」
ただでさえファッションセンスがないのにゲームの知識ですら負けているとか無理ゲーじゃないですか。
「とりあえずこのゲームは、限られた資金の中で、色んなところをうろついて、服を買って、コンテストまでに備えるの。それでファッションコンテストターンでコーデしてバトル!って感じだね」
「なるほど、結構自由度が高いゲームなんだ?」
「うん。でもね、コンテストでは、お題があって、こういう気分の時、着たい服とか、こういうのが好みとかそういうのに答えた方が点数がアップするんだよね。だからそこが重要かな」
「おー、それは面白いな」
そして、ゲーム内での今回のお題は、初デートで、オシャレな夜景を見に行く時、そして気分が落ち着くような、クールな服が好みとなっていた。
適当に僕はうろつきイベントをこなしていった。
「うわ!それランダムイベントでレアの服が貰えるやつだよ!」
「え!?ほんと?やったぁ」
そしていつの間にか、ファッションコンテストターンになった。
「おぉ、意外といいコーデ!点数高くない?」
僕は初見でもそこそこいい点数を叩き出せなみたいだ。それでも、諒花の点数には遥か及ばず、ファッションバトルに負けた。
「諒花も、このゲーム詳しくて凄かったよ」
「アハハ、それほどでも!」
なんやかんやあって、ゲームはとても楽しかった。
「おーい、諒花いるのか?」
「あ、パパの声だ」
「え!?」
コンコンと部屋のドアが叩かれる。
ま、まずい!
「ん?部屋に誰かいるのか?お友達か?」
と諒花のパパはそう言って、部屋のドアは開いた。
「お、じゃましてます……」
「紹介するね、ウチの彼氏の、中森 渡くん」
「なに!?彼氏だと!!私は認めん。認めんぞぉ!」
「もう、パパやめてよ!」
「うぅぅーん、父さんはなんと言われようとどこの誰かも知らない男が諒花の彼氏なんて...ん?君、もしかして南高校の生徒かい?」
「は、はいぃ...」
「そうか、、南高校か、、、」
「パパ?」
「あのぅ、、それがどうか?」
「君!!!!! どうだ家で働かないか?もし、君が優秀な塾講師としてバイトしてくれるのであれば、認めなくもないがな?」
「もう、何言ってるの!!!パパ!」
「諒花は黙ってなさぁい!今はパパと彼のお話ですよ!」
「コラ!!!いくらパパでも渡くんに失礼な事したら容赦しないよっ!」
「ひ、ひいいごめんごめん、でも人手が足りなくて困ってるんだよぉ...父さんを助けてくれよぉ」
「だからって、渡くんに迷惑でしょ!いきなりそんなこと言って巻き込んじゃったら!」
「そ、それはパパが悪かったよォごめんごめん、じゃあこの話は無かったことに」
勝手にふたりで会話が進んでいく。いや、別に塾のバイトくらい困ってるならやっても良かった。
「いいですよ。僕、塾講師のバイト、やってみます」
「おぉ!?本当かね!君!」
「ちょっ!?渡くん!?いいの!?」
「うん。困ってるみたいだし。別に僕いつでも暇だから。あと、ちゃんとバイト代出るならやります」
「お金はもちろんちゃんと出すよ、えっと、君なんて名前だったっけ?」
「中森 渡です」
「中森君。来週からうちの古賀塾のバイト講師として、頼んだぞ!!」
「は..はい!」
「もう、パパったら渡くん、本当にいいの?」
「うん。大丈夫だよ、多分」
こうして、僕の古賀塾でのバイト?は始まった。
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