第十話 南高校文化祭 文化祭デート!

二年C組のクラス出し物の担当が終わり、僕はやっとメイドのしがらみから開放された。

はぁ、疲れた。人間慣れないことはするべきでないといういい教訓にはなったけど。


とりあえず自由行動だし、楽しむか!そう思っていると、廊下にいる古賀さんを見つけた。


「おーい、渡くーん!」


「古賀さん!」


「ようやく終わったみたいだねー!それじゃ、回ろっか」


「ん?あれ、あの二人は?」


「あぁ、天子と菜々子?あの二人ならなんか急に用事があるとか言って」


ギャル友の二人はもう帰ってきたらしい。あの二人、そんな名前なのか。なんか気を使ってくれたみたいだけど...


「とりあえずどこ行く?」


「ちょっとお腹減ってて何か食べたいかなぁ」


「あーじゃあ屋台行こうよ!」


僕達は、屋台の出店が並ぶ校庭へと向かった。


「渡くん見てあれ、面白そうじゃない?」


古賀さんが指差す先には、ロシアンルーレットたこ焼きと書かれた暖簾のたこ焼き屋台があった。


「確かに、ロシアンルーレットは面白そう」


「買ってみようよ!」


そう言って古賀さんは、屋台でロシアンルーレットたこ焼きを買った。


屋台の店員は、6つのたこ焼きの中に、たこが3つ入った当たりたこ焼きが1つ、カラシが大量に入ったハズレたこ焼きが1つあると説明した。


「この中に、当たりハズレがあるんだ」

僕はそう呟いた。


「これ、大きさ的に、当たりとハズレこの2つじゃない?」


古賀さんはそう言って2つのたこ焼きを爪楊枝で刺した。

確かに、6つのたこ焼き中、2つのたこ焼きが見るからに大きかった。


「じゃあ、実質2択ってことか」


「どっちにする?」


「うーんじゃあ、僕は左端の方で」


「おっけい。ウチもちょうど右端を選ぼうと思ってたから」


「じゃあ、いっせーので、で食べよ?」


「うん。分かった」


僕達は、爪楊枝を同時に掴んだ。


「じゃあ行くよ、いっせーのーでっ」


そして、持ち上げ、ふーふーしてから、一気にパクッとたこ焼きを一口で食べた。


うん、美味しい。外はカリカリ、中はトロトロという美味いたこ焼きならではであり、タコも、、ゴロゴロ入ってる!これは当たりだ!

と、ということは、、?


「うっううか、辛いぃ~~~!」


古賀さんは叫び、目頭に涙を溜めていた。


「み、水ぅー!渡くん、水買ってきて、出ないと、し、、死ぬっ」


「古賀さあああん!!」


その場で、古賀さんはバタッと倒れた。最強の古賀さんでも辛いものに弱いのか。それとも誰が食べても致死量レベルで入っていたのか。

とりあえず、僕は古賀さんを助けるために、足早で水を買いに自販機へ向かうのだった。



「いやー、、さっきは、酷い目にあったよ」


「す、すごい辛そうだったね...」


「いやほんとに、殺す気か!ってくらいカラシ入ってたから!」


「まぁでも、普通のたこ焼きは美味しかったね」


「うんうん、で次どこ行くー?」


「一年D組のお化け屋敷面白そうかなって」


「えぇ、お化け屋敷!?ウチ苦手だなぁ」


「ホラー苦手なの?」


「うーん、ホラー映画とかはまぁいけるけどお化け屋敷とかはちょっと」


「なるほど、じゃあ辞める?」


「いや!渡くん、行きたいんでしょ?挑戦してみてもいいよ」


「いいの?」


「うん、いざとなったら、渡くん置いて逃げるから」


「えぇ...」


と会話しつつ僕らは、一年D組のお化け屋敷、〈呪われた廃病院〉へと足を踏み入れた。


教室は薄暗く、通路は狭く、一本道だった。怖いBGMが雰囲気を醸し出している。僕が先頭に立ち、古賀さんが僕の背中を盾にして屈みながら奥へ奥へと進んでいく。呪われた廃病院というテーマということで、理科室から持ってきたであろう人体模型やフラスコなどの実験道具があった。


「ばぁぁぁぁ!」


「ぎゃあああ!」


包帯ぐるぐる巻きの包帯男(男子生徒)が脅かしてくる。その声とともに、古賀さんは叫び声を上げた。


「あぁぁぅぅぅ~」


お次は、血塗れナース(女子生徒)の登場だった。女子生徒が着るナース服に血糊がベッタリと塗られている。


「ひいいいっ!」


これにも古賀さんは悲鳴をあげた。

古賀さんとは対照的に、僕は、至って平常心で声を上げることもなかった。


脅かしポイント2つを終えて、お化け屋敷は終わった。文化祭クオリティにしてはよくできてるなと思った。


「渡くんは、どうして驚かないの?」


次の出し物に移動する中、古賀さんはそう言った。


「いやぁ、生徒が演じてるって思うと現実味ないって感じて」


「す、すごいね!あの状況でそんな冷静なんて」


そう言って、古賀さんは羨望の眼差しを向けてくる。


「ま、まぁ良く言えばそうかも...」


何故か僕は、物事を客観的に見すぎる癖のようなものがあり、上手く小道具作れてるなとか、この生徒お化けの演技上手だなとかそういう視点で見てしまう。そっちに気を取られてあまり怖く感じないだけで、そこまで羨ましがられる事でもないと思うけど。


「ウチも渡くんみたいにお化け屋敷で悲鳴一つ上げず行ってみたいよ」


古賀さんはそう言うが、それもそれで、お化け屋敷泣かせで相手からしたら厄介な客かもしれないなと思った。



気を取り直して、僕達は景品的当て射的ゲームをやっている3年A組へと来ていた。


「あっあれ!あの時取れなかったやつ!」


古賀さんが興奮気味に、景品を指差した。その景品は、ゲームセンターで取り逃したあのゆるキャラのぬいぐるみだった。これは天から授かりし、リベンジのチャンスだ!


「あ、あれ今度こそは、取るよ!」


「渡くん、その意気だ!頑張れ!」


僕は、説明役の生徒に説明を受け、射的の銃を構える。


弾は、五発。


まずは、一発目。


積み上げられた机の一番上の段の、右から二番目の的が、ぬいぐるみの的だった。他の的よりも、的が小さく、目玉商品ということなのだろうか。


僕は、右目を瞑り、左目で的を凝視ぎょうしした。狙いを定めながら、銃の照準と的を合わせ、トリガーを引いた。


パンッ!


放たれた弾は、的を外した。少しだけ右上に上ずってしまった。


「うーん、難しいな、思ったより上に行く」


「もうちょっと低く構えた方がいいかもね」


古賀さんのアドバイス通りに、低く構えると、二発目は、的より少し左下に外れ、今度の三発目は、高低の照準は合っていたが、右に外れた。


「ああ惜しい!高さはあってたのに」


「あと二発か...」


これまでの射撃で、何となく弾が何処へ行くかは分かった。あとは微調整。


僕は、慎重に狙いを定め、照準を微調整していく。


よし、いける。この位置だ。


僕は心を決め、四発目のトリガーを引いた。


パンッ!乾いた音と共に、銃弾が発射され、その弾は、的に吸い込まれていくように、軌道を描き、見事的中した。あの日の借りを返し、リベンジを果たした瞬間だった。


「やった!当たった!!」


「おぉ、当たった」


「おめでとうございます!命中です!こちら商品になります」


と言って、店員役の生徒は、あの日ゲームセンターで取れなかったゆるキャラぬいぐるみをくれた。


「はいこれ、何とか取れた」


「ありがとう!マジで射的うまかったよ!」


「あのお客さん、まだ一発残ってるけど打ってきます?」


「ああじゃあ一応」


狙いの商品は獲得できたし、適当にぬいぐるみの隣の的でも狙っておこう。


僕はその的に狙いを定め、適当にトリガーを引いた。すると、ぬいぐるみの的よりも、何倍も大きい的であるからか見事に命中した。


「うわ!二連続!?渡くんマジでやばいわ!」


「おぉ、二連続命中!凄いですね!お客さん!ではこの商品をどうぞ」


「なに、、これ?」


店員の生徒から手渡されたのは、二枚の紙切れだった。


「えーっとこれは割引券で、どこの店か分からないんですけど、と、とにかく誰かが落とした謎の割引券を拾ったものです!」


店員の生徒はあまりにも曖昧すぎる解答をした。流石は文化祭クオリティ。たまたま拾った謎の割引券も景品にするその心意気やヨシ!


「どこの店だろうね、渡くん」


「うーん、、、多分だけど...あそこかな」


僕はその割引券の店に、何となく心当たりがあった。もちろん確証はなかったが、このオシャレでゴージャスな色合いの紙と文字。そして、お店の外観のイラストに見覚えがあったのだ。

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