第90話 鑑定スキルふたたび
さて、待ちに待った鑑定スキルだ。速攻で取ろう。鑑定スキルの解放条件は、「1,000種類のアイテムを精査鑑定」だった。その精査鑑定が、まさか一度インベントリに取り込んで、タップして概要を閲覧するだけなんて。前ループでそれが判明した時、愕然と床に
の、予定でした。
僕の部屋にあるものを全部取り込んでも、200品目ちょっとだった。そうだよね。たかだか学生個人の持ち物、そんなにいっぱい種類があるわけない。前ループのあの時は、実家の倉庫の整理で、結構いいところまで行ってたんだな。ああ、世間って無情だ。どうしよう。また一度実家に帰って、土日で奉公して来るべきか。
———いや、まだ終わらん。終わらんよ。
僕は月曜日から、学園内の
そして木曜日の放課後。図書館の隅の方で、本や備品をこっそり出し入れしている時に、それは起こった。インベントリの本の項目に、+マークが付いている。まさか。
-書籍
経済学入門1巻
経済学入門2巻
経済学入門3巻
…
タップして詳細を開いたら、一冊ずつ分けて閲覧できたじゃん!倉庫いっぱい回る必要なかったじゃん!
何なら自室のアイテムだけで、結構なアイテム数になったかも知れない。クソが!おっと、口が悪くなってしまった。アレクシ君は割と育ちの良いお坊ちゃまなのに、僕が前世の記憶を取り戻してから12年。大分文化汚染してしまった気がする。
気を取り直して。鑑定はあっさり取れた。それで良かったんや。次のループでは楽できるんや。いや、次のループなどない!
最近情緒不安定だな、と思う。前ループ、絶対行けたと思ったのに。周りからは天然だとかのんびり屋と言われ、自分でも割とストレスに強い方だと思っていたのに、結構なダメージだったようだ。しかしここで折れても始まらない。ストレス社会を生き延びて来た社畜を舐めるな。
余計なことを考えてしまう時には、何かに没頭するに限る。夜は寮でコツコツと内職して、魔道具作りと付与三昧。そして週末は再びトンボアタックだ。外泊届けを出し、初級ダンジョンの中で狭小住宅を建ててお泊まり。あらゆる無念をトンボにぶつけ、お陰様で2日間で約300周、レベルは22。羽の在庫は万を超えた。よし。
とりあえず、聖銀合金で作った指輪に付与。指輪なら邪魔にならないし、革紐に通して首から下げてもいいだろう。前みたいに靴や防具に付与してもいいんだけど、もっと良いものが出来た時に併用出来ずに困って、結局最後まで秋津装備のままだったりする。強いのは、後からいっぱい出て来る。とりあえず、これは
さて、今ループでもう1つ進化したこと。それは、魔道具の改良だ。アーカートの魔法陣学では、複数の魔法陣の類似点をまとめ、1つの陣で2つ以上の効果を一度に発動する研究が進められていた。ゲームの概念を知り、ステータス画面が見られる僕としては、それはほぼ不可能じゃないかと思うんだけど、チャレンジするのは良いことだ。そしてそれに触発されて、僕も考えてみた。1つの魔道具で、複数のスキルが使えればいいんじゃないかって。
最初は、リボルバーを回すと違うスキルが発動する、ピストルのようなものを考えた。僕としては結構イケてると思うんだけど、この世界の人に見つかった時、根掘り葉掘り聞かれることは目に見えている。アーカートでピンク頭に見られたら、尚更面倒臭そうだ。
そこで銃型は諦め、従来の
まだ全ての杖は完成していないが、10月19日土曜日と20日日曜日は、両生類の中級ダンジョンへ。ここは全てのモンスターが水属性のため、優性属性の風属性で攻める。ウィンドカッターでバッサバッサと切り刻みつつ、カエルのモンスターハウスで乱獲開始。ここのモンスターは、状態異常を起こす厄介なモンスターばかりだが、コイツらが落とす素材が役に立つ。武器に付与すれば状態異常付加、防具に付与すれば状態異常軽減もしくは無効。例えばコバルトヤドクガエルなら、毒付与か毒軽減、もしくは無効になる。更に、四種以上の素材を組み合わせると、あらゆるバッドステータスのランダム付与、もしくはバッドステータス全般の軽減・無効。
前ループでブリュノに渡した指輪も、コイツらの素材を付与したものだ。例のローズちゃんについては、今ループでも見て見ぬふりは出来ない。今度も3つほど作って渡そう。ついでに
そして付与といえば、カミーユ先輩の槍だ。前回は上級ダンジョンの素材を付与してエラい槍が爆誕してしまい、ちょっとした騒ぎになってしまった。今回は中級のヤツにしておく。
ヤドクガエルの槍
→ 攻撃力55、重量2、毒攻撃
なお後日、カミーユ先輩は無事熊を撃破したが、採取された熊肉は毒に汚染されていたという。殺人熊が、何らかの原因で毒にやられ、錯乱して山から降りて来たのではないかと噂になった。倒すとアイテムとコインに変わってしまう迷宮の魔物と違い、地上の魔物は肉も食べられるということを忘れていた。ごめんなさい。
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