第32話 パワーレベリング(3)
次の土曜日。僕はカミーユ先輩と、初級ダンジョンに来た。槍術のジョリオ先生は相変わらずで、これは高等部の僕らが何とかしなきゃいけないんじゃないかと相談を持ちかけて。彼の父親は、平民ながら領軍の槍術の師範だ。先生が難癖付けて授業をボイコットする度に、必然的に彼がクラスのリーダーとなって、自習という名の授業を代行していた。もう槍術クラスの先生、彼でいいじゃん。
彼には、槍術の自主練ということで、ダンジョンに付いて来てもらった。だけど本当は、来月の野外実習で彼が怪我をしないように、パワーレベリングだ。1周目、11月に3年生が大怪我を負うということは知っていたが、それがカミーユ先輩だとは認識していなかった。そのせいで、彼の負傷を防ぐことが出来ず、僕は密かに後悔していた。そこで2周目、ダンジョンに連れ出した甲斐あって、彼は単独で
まずは二人で、冒険者ギルドへ。今回はパスしようかと思ったけど、やっぱり人気の初級ダンジョンはレベリングしやすく、入るためには入り口で冒険者証を提示しなければならない。
「ワクワクするね、アレクシ君!」
爽やかな好青年のカミーユ先輩。不人気な槍術を選択していなければ、きっと今頃モテモテだろう。実際、11月に殺人熊を撃破した後は、ロッカーにラブレターが溢れるほどの人気だったんだけど。ベタな展開だ。
彼は私服に自前の槍。僕は学園から訓練用の短槍を借りて。だけど、僕の本当の
「先輩、今日は少し先まで進んでみたいんです」
1階でピルバグを倒し、調子が出て来た頃合いで、僕は先を促す。先輩はちょっと戸惑っていたけど、「危ないと思ったら引き返すよ」と、渋々了承してくれた。
2階は、湧きポイントとモンスターを選べば、何とかなる。ヤスデ、コオロギ、カマドウマ。槍はリーチが長いので、慎重に立ち回れば難なく撃破できるが、やはり飛ばないヤスデが一番倒しやすい。2階でも何とか行けそうだな、という印象を持った彼は、3階への潜入を承諾。だけど僕の本命は、やはり4階だ。
今日は新しい魔道具を作って来た。他人に披露するのに、かまぼこ板ではいただけない。僕は細い木材を買って来て、指揮棒状の魔導杖に似せた魔道具を編み出した。
魔道具・
→複数の礫を敵全体に射出する。生成個数はINT/1、攻撃力はINT/10。MP40
今回から毎度お馴染み、ストーンブラストのお出ましだ。かまぼこ板と違い、細い棒に目立たないように聖句を刻むのは、骨が折れた。しかし、やることは一緒だ。レベルアップとともに上げた
なお、一回一回魔石をくっつけて発動する原始的な方式ではなく、手元でオンオフできるスイッチを付けた。小学校でやる豆電球のアレと同じで、回路を開閉出来ればいい。これは、こっちの魔道具でも同じものが付いている。一番苦心したのは、MPの供給だ。供給源の魔石を、どこに仕込むか。僕は奮発して魔力糸を買い、荒く網状にして、魔石を100個ほど包んだ。それを袋に入れて服の下に仕込み、袖の下から糸を伸ばして、杖まで接続。これでリロード問題はとりあえず解決。今後もっとブラッシュアップして行きたい。
魔道具に関する
「大地におわす豊穣の女神よ、捧げしマナと引き換えに我が願いを聞き入れ給え。あまねく幾多の小さき石よ、飛翔せよ、敵を打ち砕け、ストーンブラスト」
先に詠唱を済ませ、モンスターハウスの扉を開ける。詠唱はフェイクだが、無詠唱がどうとか、杖が魔道具だとバレたらややこしいことになる。扉を閉めた途端、無数の羽音が唸ると同時に、杖のスイッチをオン。
バチバチバチバチ!
杖の先からは無数の
「アレクシ君、これは…」
カミーユ先輩は呆然としている。そんな僕の現在のステータスは以下の通り。
名前 アレクシ・アペール
種族 ヒューマン
称号 アペール商会令息
レベル 8
HP 50
MP 400
POW 5
INT 40
AGI 10
DEX 25
属性 土
スキル
なし
(
(ランドスケイプ)
(ロックウォール)
(槍術)
(身体強化)
E 私服
E 魔道具・
ステータスポイント 残り 0
スキルポイント 残り 80
魔道具を使ってもコウモリに勝てないと分かった直後、僕はレベルアップ分のステータスポイントを、ほぼ
先週頑張ってレベル上げして来た甲斐があった。
しかし流石に、散らばったコインと羽は、自分で回収するしかない。インベントリなら一瞬なんだけどな。今日一番の試練は、これかも知れない。
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