第14話 いきなり中級ダンジョン

 土曜日、僕は学生証を持って、早速ギルドに出かける。今日からE級冒険者だ。


「大まかなことはこの冊子に書いてありますが、ご不明な点がありましたら、何なりとお申し付けくださいね。」


 受付のお姉さんが、やけに愛想が良い。そうか、前回はメイスを背負った冴えない初心者だったものね。今回は、多少身なりを整えて、それなりの私服でやって来た。女の人の態度って、こんな変わるものなんだ。やっぱり外見って大事なんだな。


 僕はその足で、武器屋と防具屋に出かけた。武器屋の親父さんには、僕が槍を買いに来たことをものすごく喜んでくれて、1周目では30,000ゴールドで買った短槍を、なんとタダでくれようとした。定価50,000ゴールドだぞ。僕は押し問答の末、なんとか半額の25,000ゴールドを支払って手に入れた。親父さん、赤字じゃないかな。


 防具屋では革鎧を勧められたが、無理を言って中級品の胸鎧ブレストプレートと、丈夫な皮のブーツ、大きめの背嚢を購入した。今の僕のPOWちからでは、正直胸鎧ブレストプレートは重い。親父さんが革鎧を勧めてくれた理由が分かる。だけど今日、じきにレベルアップして、重さは気にならなくなる予定だ。


「無理すんなよ」


 親父さんは、頭をぐしゃぐしゃにする代わりに、愛用の皮の帽子を譲ってくれた。お金が貯まったら、金属製のサークレットを購入する予定だが、それまで頼りにさせてもらおう。




 今回僕が向かうのは、ピルバグでお馴染みの初級ダンジョンではなく、領都はずれの中級ダンジョンだ。ここを選んだ理由は一つ。不人気で、入り口にギルドの職員が配置されていないこと。冒険者になりたて、しかもソロの僕が、いきなり中級に入ろうとすると止められる可能性がある。だけど僕は、前回はまがりなりにもレベル80を超えた猛者だ。初級の浅層でピルバグやらヤスデやら、まどろっこしいことをするつもりはない。当然、中のモンスターのことも予習してきた。両生類モンスター主体のダンジョンだが、1体2体の少数ならば、問題なく倒せるだろう。


 ———うん。中級舐めてたね。


 前周の感覚でカエルモンスターに突っ込んで、危うく死にかけた。僕は槍の攻撃力とささやかな石礫ストーンバレット頼みで、何とか1体にとどめを刺し、這々ほうほうていで入り口まで逃げ帰った。酸でブーツがやられている。不人気ダンジョンは鬼門だ。


 とりあえず、レベルが上がったので良しとしよう。パラメータはPOWちからに全振り。スキルポイントが入ったので、槍術を取得。槍術のレベル1は強撃だ。1体相手なら、多少安全に削れるようになったはず。


 入り口から一番近い湧きポイントで、アシッドフロッグをヒットアンドアウェイしつつ、僕はレベル6になった。途中、槍で一撃で仕留められるようになったため、POWちからを上げるのはひとまずやめて、別のパラメータにも振り分け始める。スキルポイントは、石礫ストーンバレットに振って、レベル2の散弾銃ショットガンを取得。レベル4のストーンブラストを覚えるまでは、全部突っ込む予定だ。全体攻撃で、使い勝手がいいしね。


 とりあえず、今日はカエル33匹で帰還。あまり良い出来とは言えなかったが、複数体に攻撃できる散弾銃ショットガンがあれば、明日は初級の下の方、トンボやカブトムシが狙える。前回ウィングキラーの二つ名が付いた僕。風属性モンスターは、格好の獲物だ。狩って狩って狩りまくろう。




 失敗した。


 ダンジョンからの帰り、ギルドに討伐部位を納めに行って、僕が出したのがカエルの舌、しかも33本だったのがまずかった。冒険者登録したその日に、中級モンスターのドロップ品だ。「コイツ不正したんじゃ?」と疑われても仕方ない。


 粘液にまみれた舌はカウンターで買い取ってもらえず、解体場へ案内された。ブーツがカエルの酸にやられていて、辛うじて自分で討伐したって信じてもらえたけど、まだ半信半疑ってところだ。何より、下手に目立ってしまった。これから冒険者活動を続けて実績を積み上げていけば、不正疑惑も晴れて行くんだろうけど、今周も後味の悪いスタートになってしまった。


 悔やんでも仕方ない明日からまた頑張ろう。ドンマイ。

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