第3話 ダンジョンに挑戦
僕は早速ノートを用意して、思い出せることを全て書き出した。前回のループでも、途中で同じことをした気がする。しかし今回はもっと気合を入れて。覚えていることを事細かに、思い出せるだけ思い出して。
こうして書いていると、色々な気持ちが交錯する。まずこの世界、植物紙があったんだ。植物紙って歴史上なかなか登場しないイメージがあるから、やっぱりここはゲームか何かの世界なんじゃないか。あと、前回までの僕、もっと世の中の出来事とか物価の相場とか関心持ってくれれば良かったのに。先行投資すれば、短期間で大金持ちも夢じゃなかったはずだ。
それから、ループが続くと分かれば、恋愛し放題じゃないだろうか。僕はそれなりの商家の息子で、貴族ほどではないにしても、下手な相手と結婚するわけには行かない。だからこれまでは、恋愛に対しては消極的だった。せいぜい、自分が童貞であることを隠したまま、仲間と「あの子可愛いじゃん」などと盛り上がっては、いつかこっそり娼館デビューすることを夢見ていたくらい。
しかし前世の僕は、普通に大人で、それなりに恋愛経験もある。だからこそ、思春期に戻った今、可愛いJKと恋愛ごっこが出来るなんて、超絶
そうだ。どこの誰がループしているのか知らんが、俺も便乗して恋愛を謳歌すればいいんだ。
ただし、何周目でループが終わるかは分からない。悪い女に引っかかって、そのまま人生が続いて行ったあかつきには、やっぱりアウトだ。相手選びには、慎重にならざるを得ない。今はこれといった相手もいないし、とりあえず学業と、その他諸々に専念しよう。
まずは剣と魔法の世界に転生したんだ。これまで僕は、商家の息子なんだから、剣も魔法も必要ないと思っていた。特段才能が無かったからでもある。だけどこれがゲームの世界ならば、レベルアップからの成り上がり、あるんじゃないか。
よし、早速次の土曜日、初心者用の武器防具を用意して、ダンジョンに挑んでみよう。領都の外れに、弱い魔物しか出ない不人気のダンジョンがあったはずだ。僕は俄然やる気になってペンを置いた。まずはモテるために、金と実力を養おう。
僕の戦いは、これからだ!
土曜日。外泊届を出して実家に帰り、その足で武器屋に出かける。領都の商家は、どこも何だかんだ顔見知りだ。僕は初心者用の武器が欲しいと告げ、親父さんにメイスを勧められた。剣は基礎が出来ていないと、取り扱いが難しいらしい。剣術を修めているのでなければ、メイスの方が威力が強いまである。「坊ンも興味が出て来たか」厳つい顔に笑い皺を浮かべ、親父さんに頭をワシャワシャされる。小さい頃から知っているので、俺はいつまで経っても子供扱いだ。
そして防具屋でも、ほぼ同じ経過を辿った。丈夫なマントに革鎧、革のブーツ。思ってたような格好良い装備とは違うけど、機能重視、動きやすさ重視だとこうなるらしい。「専門家の言うこた、素直に聞いとくモンだ」とワシャワシャ。
その後僕は、隣村行きの乗り合い馬車に乗り込んだ。人気のダンジョンと違い、専用の路線などない。隣村まで5キロほどの道のりを揺られ、到着したら少し引き返して、街道から小川に沿って分岐する小道へ。小道というよりもはや獣道。通る人もおらず、草むしていて心細いが、僕は恐る恐る草を掻き分けて進んで行く。小川を遡ること数百メートル、そこには鍾乳洞のような洞窟が姿を現した。
洞窟の中はひんやりしていて、10月なのに暑いくらいの外とは別世界だった。ぴちゃ、ぴちゃと雫の垂れる音、そして不気味なほどの静寂。生活魔法の
事前に聞いた限りでは、このダンジョンに出現するのはRPGの定番スライム、ジャイアントバット、そしてジャイアントラットだそうだ。あのコウモリもモンスター。だけど僕には飛行モンスターを倒す
コウモリをやり過ごしてから、しばらく経った。相変わらず聞こえるのは水音だけで、何の気配もない。僕は本当に、モンスターと遭遇して、倒すことは出来るのだろうか。
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