第5話☆一回戦

遠目に試合を観ている先生と合流して招集場所に向かった。

第4試合が終わり第5試合の選手がリングに上がる。

それと同時に私と先生はリング脇のスペースで出番を待った。


ゴングが鳴って両者ががっちり組み合う。

両手を合わせる手四つから始まり、一方が相手をロープに振ってドロップキック。

今対戦しているのは確か2年生同士の対決だ。

どちらも動きは悪くないけど、恐らく高校に入ってから始めたくらいかな。

勝った方が次の相手になるので戦闘スタイルはチェックしておこう。


どっちも結構打撃中心だ。

組んだところからの攻防が苦手なのかも。

あ、タックルいった!いい位置で倒した!

足を取った、どうする?

お!ストレッチマフラーだ!

あぁきつそう。

ロープも遠いしこれは…。


やがてゴングが鳴った。

ストレッチマフラーでギブアップを奪った人が次の相手だ。

いや、その前にまずは目の前の試合に集中しなくちゃ。


「次、第6試合、リングに上がってください」


着ていた上着を先生に預けてリングに入った。


”続いて第6試合を行います。赤コーナー朝日丘高校前田さん、青コーナー中野東高校宮本さんの対戦です”


リングからのこの景色が私は好きだ。

ここに立つとリングの外はピントが外れたみたいにぼんやりするけど人がいる気配、視線と声は感じる気がする。


アナウンスの間にボディチェックを受ける。

相手は3年生。身長は私より小柄だけど筋肉がありそうな身体つきだ。

でも相手が誰でも関係ない。

やってやる。勝つだけだ。


ゴングが鳴って相手と組み合う。

力はそれほど強くない。

体重をかけて押してくる。

だったら、そのまま流してロープに振る。

で、ドロップキック!よし、いい感じ!

すかさず相手もロープに振ってくる。

そしてドロップキックは…うん、大丈夫だ。


もう一度組んでロープに振った。まずはラリアット。

起き上がったところでボディスラム!

足はまだ取れないか。

関節技を狙うにはもう少しダメージを重ねておかなきゃ。


相手の動きには対応できている。

前半で確実に技とダメージを重ねていく。

そろそろ相手の足を取って関節技に持ち込みたいけど、それは相手も警戒してるよね。


ローキックでじわじわ削り、間合いが詰まったらエルボー、そしてボディスラムと確実に技を重ねていった。

相手の体力は着々と奪っている。呼吸も荒くなってきている。関節技が警戒されているなら...


前蹴りをかわして一気に背後に回り込んだ。

両腕でしっかり相手を抱え込む。そこから後ろに思い切りぶん投げた。


重い手応え!

相手をブリッジして投げたまま体勢をキープして抑え込む。

もがいているけど、これはいける!

レフェリーがリングを3回叩き、ゴングが鳴った。

試合終了だ。


"ただいまの第6試合、赤コーナー朝日丘高校前田さんの勝利です。試合時間6分39秒、決め手はジャーマンスープレックスでした"

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