ここに立つ
雪桜
ここに立つ
あの人がそう言ったから、私の世界は完成してしまった。
塩っぱくて暖かい、母の呼吸。
このままではいけない。だが私はそれが心地よかったのだ。
風に触れて、太陽に触れた。滲んだ視界の先に、手。震える指先は酷くかじかんでいた。
空の足跡。揺れる水面。全部同じだった。
私が私を呼ぶ。海に漂う母に向かって。
私が私を呼ぶ。空に漂う母に向かって。
波しぶきが、私に落ちる。まつ毛が濡れる。
泣いている?この味は。
でも舌ももう無い。
「貴方は天使」
海は言った。
「私の天使」
海は言った。
私の血は錆び付いて、砂浜に埋もれた。
骨も呼吸も置いてきた。
遠くには何も見えない。
地平線すら見えない。
あなたの海で、漂う。魂。
ああ。
ここに立つ。
あの日、夏の終わり、あなたに届けたかった祈り。
あの日、冬の始まり、あなたに届けたかった祈り。
ここに立つ。
あなたの胸に抱かれたい。
それが私の世界の果てなのだから。
ここに立つ 雪桜 @sakura_____yu
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます