前代未聞の異能力者~自ら望んだ女体化だけど、もう無理!~

@sunakaze0909

prologue

 額から冷や汗がだらだらと流れ落ちていく。

 自室の中、僕はベッドに寝ころがりながら、腰にブランケットを巻いて下半身を暖めていた。

 湿っていて気持ちの悪い股間の水気をなるべく無視して、ストレスが溜まらないように我慢する。


 お、お腹が痛い……。

 誰かが下腹部を鷲掴みにして捻り取ろうとしているかのような、体験したことのない痛みが、波のように襲いかかってくる。


「ーーっ! もう無理! 自分から頼んでおいてなんだけど! もう無理! ギブアップするから許してください! こんなことになるなんて予想できていなかったし、そもそも想定外の事がここまで発生するなんて思わなかったんだ! こんなに痛かったり辛かったりするだなんて、思いもしなかったんだ! だから、だから僕を元に戻してくれ! お願いします!」


 誰もいない虚空めがけて、僕は必死に祈りを捧げる。

 しかし、一回目のときは安易に叶えてくれたというのに、二回目となる今回の祈りについては、どうやら叶えてはくれないようだ。


ーーもしも辛いなら、その身体を放棄すればいい。ーー


 脳に直接だれかが語りかけてきた。


「ほ、放棄?」


ーー幽体・霊体、それに肉体を私に譲ってほしい。そうすれば、君という存在は世界から消える。もう苦しまずに済むであろう? なに、単に、君という意識が私に成り代わるだけで外見の変化はない。私が君になるだけさ。だから安心して、意志を無くし意識を譲ってほしい。ーー

ーさあ、苦しみたくないなら、さあ、早くしたまえ。ーー

「……意識を……譲る……え?」




 苦しみと、自分の全てを天秤にかける事態に陥ることになったのは、ある日、自室で冗談半分で、とある事をとある事情で祈ってしまったからであった。

 あの日、あんな事を祈ってしまったのは、僕にとって衝撃的な出来事があったからに他ならないーー。

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