第2話 不景気の影響

「……どれもパっとしないわね……」

集まってきた競売品はどれもパっとしなかった。


「皆様お苦しいようで……」

デルスが申し訳無さそうにそう言った。


「勝ち戦じゃないのかしら?」

私は判っている事を嫌味たらしく言った。


「なかなかに……」

デルスがまた申し訳なさそうに頭を下げた。


「ごめんなさいデルス。忘れて」

私はそう言ってデルスに謝った。使用人に当たってもしょうがないし、国政批判どころか提供者への文句に繋がる言葉は慎むべきだった。


「とんでもございません」

デルスはますます恐縮して頭を下げた。


「まあ期待してもう少し待ちましょう」

私は笑顔を作ってそう言った。


「お嬢様が男子だったら……」

デルスはまたそんな事を言った。


「私も最近そう思う時があるわ」

そうなら裸の女が浮いてても不快にはならない。だがデルスはその言葉を誤解した。


「リンドバーグ準男爵の事は……」

デルスはそこで言葉を濁した。


「止めて頂戴」

私はぴしゃりとそう言った。


私とデルスのアランに関する認識は違っている。私とアランは一時期は悲劇の主人公そのものだった。しかしデルスはそれがより深い悲劇を迎えたと捉え、私はその悲劇の質が変わったと捉えている。あくまで悲劇だ。喜劇ではない。



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