第49話 防衛組の再会
職員に案内された部屋に入ると、もう既に何人かの冒険者の姿があった。
全員漏れなく結界内で戦っていた冒険者達であり、まず真っ先に視線が合ったのは、
「あー、SAくんだー。久しぶり〜」
「SAじゃないか! 元気にしてたかい!?」
後方支援部隊で一緒になった二人組だ。
「満澤さん、伊達さん。お久しぶりっす。お二人も呼ばれてたんすね」
「まあね。アタシはB級戦功、円佳がA級戦功だ。まさかアタシも選ばれるとは思わなかったけどね。それよりSA。アンタ、S級戦功なんてやるじゃないか!」
「あ、あざます……!」
言えば、二人の視線が俺の隣に移る。
「……天頼四葉だね。アンタの事はよく知ってるよ。自己紹介が遅れてすまない。アタシは満澤愛紗。この前の防衛戦でSAと一緒に後方支援部隊で戦った者だ」
「どもどもー。はじめまして、伊達円佳です。同じくSAくんと一緒の部隊で戦ってましたー」
「こちらこそ、はじめまして! 天頼四葉です! お二人のことは、アシスタントくんから聞いてます。ウチのアシスタントくんを良くしてくれたみたいで、その節は本当にありがとうございました……!!」
天頼が深々と頭を下げたので咄嗟に、
「おい、お前は俺のオカンか」
「せめて保護者って言って欲しいな。それかお姉ちゃんでもいいよ」
「いや、俺ら二ヶ月しか誕生日違わねえじゃん……」
ついため息を吐く。
それから暫し間を置いて、満澤さんと伊達さんが目を丸くしてることに気が付く。
「……どうかしました?」
「ああ、いや……アンタ、学生だったんだなって。何となくそんな気はしてたけど」
「うんうん。しかも四葉ちゃんと同い年だったとは。いやー、驚きだよ」
——あ、ヤベ。
やらかした、普通に口滑らした。
つっても、歳はもうなんとなくリスナーに勘づかれてはいるけど。
けど、特定されるのと自爆するのは話が違うじゃん……!!
冷や汗が流れるも、
「アッハッハ! 安心しな、周りに言うなんて野暮な事はしないよ。冒険者が正体を隠すのは、共通してそれなりの理由があるってことだからね」
「……あざっす。そうしてくれると助かります」
身バレを避けてるのは、単純に平穏な日常生活送をりたいってだけなんだけど。
もし周りにSAくんだって知られでもしたら、まず面倒なことになるのは目に見えてるし。
頭を下げたすぐ後だ。
「おおっ、SAと天頼ちゃんじゃねえか! 久し振り、アウトブレイク以来だな!」
後ろからの声。
振り返れば、征士郎さんがエレベーターがある方向から歩いて来ていた。
「あ……征士郎さん。どもっす。この前は助けてもらいありがとうございました」
「お久しぶりです! ……って、私は気を失っちゃってましたけど。でも、アシスタントくんから私たちを助けてくれたって聞いてますし、アーカイブでもその時の様子は確認してます。遅れながらではありますけど、ありがとうございました!」
「何、良いってことよ。寧ろ、俺が礼を言いたいくらいだ。お前らのおかげでグランザハークの討伐記録が俺に付いたようなもんだし。二人とも、あいつを押さえ込んでくれてありがとよ!」
白い歯を見せると征士郎さんは、俺と天頼の肩をポンと叩いて部屋の奥へと歩いていった。
その背中を横目に、
「……天頼、征士郎さんと面識あったんだな」
「うん、かなり前……それこそ、配信始めたての頃に東京湾ダンジョンで配信してたら、偶然遭遇したんだ。それで顔と名前を憶えられてって感じかな。東京湾ダンジョンに行けばそれなりの確率で会えるみたいだよ」
「マジかよ。……つーか、お前も東京湾ダンジョン潜ったことあったんだ」
「一度だけね。でも、一人だと五十層が限界だったよ」
天頼は肩を竦めて言う。
「……お前、さらっとエグいこと言ったな。なんでソロでそんな行けんだよ」
「あの時は結構……というか、死に物狂いで頑張ったものですから。けどもう一人で潜るのは勘弁かな。最後まで魔力が持ちそうにないもん」
「天頼でも魔力足りなくなんのか」
「まあね。ほら、東京湾ダンジョンは他のダンジョンと比べて広いし、一から潜っていくことしか出来ないから」
ああ……そういや、なんか聞いたことあるな。
東京湾ダンジョンの攻略が進まない原因の一つとして一階層毎の大きさが他よりあるってのが挙げられるのが、それ以上に途中から入り直すことが出来ない点にある。
普通のダンジョンは、上層から中層、中層から下層といった、区分が切り替わる階層で中継ゲートなるものが設置してあり、これがあることで階層の行き来をしやすくしているのだが、中継ゲートは全てのダンジョンに設置できるわけではない。
原理は未だ解明されていないが、層の区分が切り替わった階層でしか効力を発揮しないからだ。
そんでもって、東京湾ダンジョンに区分が切り替わる階層は存在せず、加えて確認されているだけでも八十層を超える長丁場の為、攻略が難航しているってわけだ。
「……でもなんで、東京湾ダンジョンに潜ろうと思ったんだ。やっぱ知名度を上げるためか?」
「まあ、それもあるにはあるけど……一番は、りおんちゃんがソロ探索チャレンジをしていたから、かな」
りおんちゃん——春川りおん、か。
やっぱ同じ配信者だから意識してるところあんのかね。
防衛に参加する直前、ダンジョンに突入していたSランク冒険者の名前を聞いた時も、春川りおんに対してだけやけに反応してたし。
思っていると、また新たに戦功の対象となった冒険者が職員に案内されて部屋に入ってきた。
「あ——、」
その人物を見て天頼が声を漏らす。
どこか憂いを帯びたような大きな瞳と軽くウェーブのかかった真っ白なロングヘアが特徴の少女。
ちょうど今、話題にしていた件のSランク冒険者——春川りおんだった。
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