首吊り人形
徳田雄一
昔話と今
「ねえ、知ってる?」
「なに?」
私の友人のユミコは昔からホラーやミステリーなどの小説が好きなようで、よく理想を語っては小説を書き起こして自分の小説が売れないかなんて夢物語をずっと話してくれる愉快な子だった。そんな子から某有名CMのような言い方で聞かれる。
「あのね、私昔住んでた場所知ってるでしょ?」
「あぁ、凄い田舎だっけ?」
「そう。ずっと昔から伝わる昔話があって」
「またそういう小説?」
ふざけ半分で聞いた時だった。ユミコはとても真剣な顔で話し始めた。
「これは小説でもなんでもないの。聴いて」
「う、うん」
ユミコはいつにもなく本気の顔で話しを再開させた。
「昔、とあるひとつの家で一家心中があったんだって。あんまり言うのはあれだけどよくある話に聞こえるでしょ?」
「う、うん」
「でも、この話は不可解な点が多かったの。一家全員が首を縄で括って死んだんだけど、その横には同じく首を吊った人形があったんだって。それも100キロもあったらしくてさ」
「……え?」
「そう、びっくりでしょ。それで警察も調べたらしいんだけど、その人形が実は家族よりも吊られた時間が長いんだって」
「つまり家族は意味ないのに人形の首を吊ったってこと?」
「うん……」
あまりにも不気味な話に背中に悪寒が走る。
「そ、それで?」
「そこから特に何も無かったんだけど、その人形は警察に持っていかれたはずが気づけば無くなってたらしくて」
「え、キモ!」
「気持ち悪いでしょ。でもここから悲劇の始まりだって。実はねその人形、今も移動を続けているみたいで」
「嘘くさ〜」
最後のオチはとてもつまらなかった。よくあるホラーにあるような物で私は席を立ち、水を飲もうと自販機に向かった。ユミコも自販機に用があるのか後ろを着いてきているように感じたが、どうにも静かに着いてくるのが気になり、後ろを振り返った。
「ユミコってばー!」
だけど後ろに何も無かった。確かにそこに人は居たはずなのに。私は気味が悪くなり急いで教室に戻るとユミコの姿はなかった。
椅子に置かれていた置き手紙に気づいて、私は手紙を開いた。
【ごめんね。さっきの話、実は誰かに話してしまうとその人が呪われるって話なんだ。なんで聞かせたか。あんた私の彼氏を盗ったよね。だから恨みからなんだ】
彼氏を奪ったなんて噂は嘘で終わったはずなのにユミコはそれが原因で別れたらしく未だに恨んでいたようで、私に呪われるという話をした。有り得ない理由で恨まれてしまい、悔しくなりユミコを探そうとした時だった。
「きゃあああああ!!!!」
大きな叫び声が聞こえる。私は急いで声の元へ急いだ。
そしてその声の元に着いた時だった。
首を吊ったユミコと、首を吊った人形があった。
「ゆ、ユミコ」
「お、おいどうした!」
「せ、先生!!」
素早く警察が着き、首吊り人形は回収されてユミコの遺体が運ばれて行った。これが原因で学校は数週間の休みを取った。
その数週間後のこと、あの忘れもしない話を考えながら登校していた。私は教室についてバッグを下ろした時だった。ぽたぽたと何かが流れる音が聞こえ上を見上げた時だった。
「え……」
そこには警察が回収したはずの人形が血を流して首を吊っていた。私は叫び声を上げようとした時だった。
「黙れ。静かにしろ」
「……んんっ?!」
私の口元を塞いだのは、私のクラスの教師だった。
「お前とユミコが話していた話は本当だ。まぁちなみに首吊り人形の噂だが、俺が全てやっている」
「……?!」
「昔からの話だって言いたいか。ユミコが話したのは3年前の話でな、俺は殺人鬼ってわけ。じゃあな!」
私は口にハンカチを詰められ手首を縛られた状態で首を吊ることになった。何も反抗できず目の前が暗くなってきた頃、教師は私の口からハンカチを取り、手首の縄を解いた。そして手首に着いた縄の跡を消すようにファンデーションを塗りたくった。
それを見て、私は息ができなくなり心臓が止まるのを感じていた。
☆☆☆
「我が校の生徒2名が亡くなりました……」
「うぅ……」
「郷田先生……気を病まずに」
「は、はい」
首吊り人形。その話は今も尚引き継がれて行った。
首吊り人形 徳田雄一 @kumosaki
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