番外 宇蘭というオーナーについて

おはよう宇蘭

       おはよう宇蘭

 

 

 さまざまな映像が頭の中に流れ込んでは通り過ぎて行った。そして、真っ白な世界へ投げ出された時、目が覚めた。

 

「ここは」

 

 どこか、ベッドに寝かされていたらしい。上体だけ起こし、辺りを見渡すと、ここは研究室のようだと思った。機材やモニターが所狭しと設置されている。

 

 そして、自分の首の裏にも「コード」が刺さっているのに気がついた。なぜ、首に電線が?

 

「おはよう、目が覚めたかい」

 

 その声の方を向くと、眼鏡をかけた優しそうな男がこちらを見つめていた。

 男は言った。

 

「僕は手塚。博士とも呼ばれている」

 

「博士」

 

「そうさ、そして君は──」


 手塚博士はその目覚めたばかりの少女を指差した。

 

「僕の娘、宇蘭だ」

 

「“宇蘭”」

 

「そう、宇蘭。君は僕の作ったロボットで僕の娘、僕の夢だ。使命は一つ、心を学ぶこと。どうかいっぱい色んな経験をして、楽しんで、成長してほしい」

 

 


 宇蘭は目覚めた。

 今日が誕生日だ。

 

 彼女はまだ自分が分からない。しかし、何かしなければ、何か知らなければ。それを思っていた。

 

 これから広がる世界に、とてもワクワクしていた。





──── 番外編 おはよう 完

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る