Pay pay(パイパイ)でお願いします。

アオヤ

第1話 Pay pay(パイパイ)で

 時刻は夜の10時を過ぎている。

高校の部活が終わり僕が帰宅するのははいつもこんな時間だ。

僕は空腹を満たす為に近所のコンビニに立ち寄った。

昼間友人がコンビニの入口付近に◯ンドームが置いてある話しで盛り上がっていたのを思い出し、ソコに立ち止まってしまった。

僕はその場所と思われる場所をチラチラとチェックする。


 「男はなみんなコレを御守りみたいに財布に入れて、いざという時に備えるものなんだ」

友人は使った事も無いくせに分かった様な事を言っている。

モチロン僕も使った事など一度も無かった。

ここには何種類か置いてあるがどんな風に違うんだろうか?

もっとココで確認したかったがあまりココにいたら目立ってしまう。

さっさと離れたいので一番地味なパッケージの箱を選んで手に取った。


僕がレジへ向かおうとすると50歳前後のオジサンがレジ前に立っていた。

そして20代くらいの女優さんみたいな店員に話しかけてる。

「パイパイで! 」


 おい、それペイペイだろう?

わざと言ってるのか?

僕はその親父が訂正されて恥をかく姿が見たくなってしまい、そっと商品棚の影からその様子をうかがった。


 「ハイ、パイパイですね~」

女性店員は訂正しないばかりかソワソワしだした。

そして女性店員さんはなぜか周囲の様子を伺う様な仕草をみせる。

客のオヤジも周囲をキョロキョロ見回すと…

二人ともなぜか胸元をはだける仕草を見せ始める。

そしてはだけた二人の胸元にはキャッシュカードに付いてるみたいなICカードが貼り付けてあった。

二人はお互いに右手を相手の胸まで延ばすと人差し指をそのICカードに当てた。

そして何かをお互い語りだした。

「ピー カー フォンフォン ガー ピー」

それはまるでFaxの送信の時に流れる様な音だ。

お互いに何かデータを送信しているのか?

お互いの目はLEDが点滅するかの様に青白く光っている。

暫くして二人の目の光りが収まり、お互いの手を離した。

二人は身なりを整えて、何も無かったかの様に男は単3乾電池式2本分位の鉛色の箱を受取る。

「ありがとうございました」

店員はニコッとしてオッサンを見送った。


 僕は今見てしまった事が現実なのか整理がつかず、商品棚の影にうずくまる様にかたまった。

オッサンが出て行くのとすれ違いにチャラい兄ちゃんが入ってくる。

兄ちゃんはアンパンとコーラを取ってレジに向かった。

「パイパイで! 」  


僕はまたさっき見た様な事が起こるのかビクビクしながら隠れる様にその様子を伺った。

だか女性店員はチラッとチャラい兄ちゃんを見たかと思うと…

「ハイハイ、パイパイですね? 」

チャラい兄ちゃんは普通にスマホのアプリを立ち上げ店員にかざした。

その普通の行動に僕はなんだかホッとした。


 そして僕は『きっとこの店ではって言って支払うものなんだ』と解釈した。

僕は手にしたアレとオニギリとコーラを持ってレジに向かった。

そしてレジの台に品物を置いた。

僕はレジのカワイイ店員さんと目があったが出来るだけ普通を装いあの言葉を言った。

「パイパイでお願いします」

途端に店員さんの顔が曇ったかと思うと、まるで汚い物でも見るような目で僕を見た。

「エッチ! 」

なんで僕だけが…

僕はその場で膝から崩れ落ちた。

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