そこ、どこ
人生の最高潮だった。
世界を背負った生死を決する闘い。
一番煌めいていたと自負する。
もうこの瞬間を超える煌めきは発せられない。
だから、今だと思ったのだ。
今でしょ、求婚するのは。
まさか断られるなんて、思いもしなかった。
「やっぱり、魔王に待ってもらって求婚したのが恰好悪かったのかなあ。死闘を続けながら魔法で隠していた十二本の薔薇を手に持って、魔法使いに悪戦苦闘しながら近づいて、求婚すべきだったのかなあ」
「いや、そなた、そんな悠長なことを考えておる場合か?」
「え?」
首を傾げる勇者に、魔王は呆れた顔と親指を向けた。
「そこ、どこだかわかっておるのか?」
「え?牢屋の中」
「そうだの。牢屋の中だ。なにゆえ牢屋の中におるのか、理解しておるか?」
「え?魔法使いに求婚を断られた衝撃で固まった私に、魔王が氷の魔法をかけて凍らせて捕まえたから」
「そうだの。では、捕まった勇者はどうなると思っておるのか?」
っふ。
勇者ははかなげに微笑を放ったのち、目をかっぴらいて真顔で言った。
「全世界中に私の死の映像を放送しろよ、魔王。加工できないように一部始終きちんとな」
「え?なに、こわっ」
(2023.12.12)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます