フレアザウスの戦闘人形 イフ短編集

仲仁へび(旧:離久)

第1話 フレアザウスの戦闘人形 後悔



 常夏の国、フレアザウス。


 その国にはフィルという王子と、ササという機械人形がいた。


 高性能機械人形であるササは、いつも身を挺して王子を守っていた。


 それは、なぜか。


 ササには命がなかったからだ。


 命は尊くて大切なものだから、ササのような存在が活躍しなければならない。


 その世界では大きな戦ばかりが起きていて、人が死にすぎた。


 だから人間を死なせないかわりに、機械人形に危険を担ってもらう事が当たり前になっていた。


 だからササも、そのほかの機械人形と共に、人間であるフィル王子を、身を挺して守っていた。


 しかし、ササは永遠ではない。


 命はなくても部品が摩耗すれば、壊れる。


 命を狙われるフィル王子を、何度も助けたササは、千度の襲撃の際に壊れてしまった。


 フィル王子はそんなササの状態を悲しんだが、心のないササにはその感情が分からなかった。


 ただ、人形には体を守る事ができても、心を守る事はできないのだと。


 その事実を重く思いながら、永遠の眠りについたのだった。





 その自動人形の後悔は、おそらく心がある証だった。




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