「月も朧(おぼろ)に白魚(しらうお)の」 2023年 第68回全日本学生拳法選手権大会に学ぶ V.6.2
@MasatoHiraguri
第1話 はじめに
誰になにを教わった・刺激を受けたのか、といわれれば「天井桟敷の人々」に(大学)日本拳法の本質を、ということです。
2023年11月26日(日)午後3時。試合コート上にある観客席。その通路(天井桟敷と私は呼んでいる)にて。きれいなお嬢さん方に囲まれて「ラッキー!」なんてデレーッとしていた私は、隣にいらした一人の上品なお嬢さんの(OGとしての)声援に驚きました。声の大きさでは誰にも負けないという私も唸るほど、鼓膜が破れんばかり・会場全体が振動するほどの、凄まじい迫力ある大音聲(おんじょう)。まるで、虎やライオンの咆哮か、というくらいの殺気が漲っていました。
さらに私が「シビれた」のは、ごく普通の可憐なお嬢さんが、突如として「弁慶のような強者・鬼」に変身し、尚且つ、約30分後には再び、元のレディー(淑女)に戻るという、そのドラスティックな変化に、です。まさに「三人吉三廓初買(さんにんきちざ くるわの はつがい)」という歌舞伎(の第1幕)を、歌舞伎座の天井桟敷席で鑑賞する気分でしたが、今回のBGMは懐かしの歌謡曲「大和撫子七変化」。これを(心の中で)思い出しながら「お嬢 → 鬼 → お嬢」という魂の変化を楽しませて戴きました。
この「お嬢」とか「鬼」というのは、かつて立命館大生の高野悦子さんが悩んだ、世渡りの道具として(仕方なしに)つける「仮面」、或いは人が勝手につける「レッテル」のことではありません。しっかりとした強力な自我がある故に、様々な位相で自分を自在に表現することの出来る「ホンマもんの人間の変化(へんげ)力」であり、「その場・その時・その間合いで主体的に発揮される自然力」なのです。これこそ、「ジョジョの奇妙な冒険」における「スタンド」ではないか。
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「三人吉三廓初買(さんにんきちざ くるわの はつがい)」(第1幕)
「月も朧(おぼろ)に白魚の 篝(かがり)も霞(かすむ)む春の空、つめてえ風もほろ酔いに心持よくうかうかと、浮かれ烏(がらす)のただ一羽 塒(ねぐら)へ帰(けえ)る川端で、棹(さお)の雫(しずく)か濡手(ぬれて)で泡(あわ)、思いがけなく手に入る百両」
・・・
春の宵、まんまと100両の金を強盗したお嬢吉三(おじょうきちざ)が、そんな鼻歌を口ずさみながら川端を歩いていると、お坊吉三という悪党が現われ、その金を渡せとお嬢に凄む。
はじめのうちは品の良いお嬢さんを演じていた彼女(彼)ですが、正体がばれるや「獲れるものなら(命尽くで)とってみな」と、凄む。
この芝居では、きれいなお嬢さんが強盗に出くわし、正体を見破られた途端、鬼(のような凄みのある男)になるという、「お嬢 → 鬼」の激変化が一つの大きな見どころです。
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◎ 関西の大学日本拳法
① 彼女のような、迫力のある女性(拳士)は関東には存在しない → ◎なぜならば、
② 彼女は子供の時から日本拳法をやっていた → ○ ?
③ 彼女は大阪人だから → ○ ?
つまり、大阪という精神的風土で日本拳法を嗜む(好んである事に心をうちこむ。技芸の稽古を受け、ある程度の心得がある)こと10数年。その間に鍛えられ・醸造された精神であるが故に、あのような存在感のある人間となった(のではないか)。
日本拳法の(最終)目的が、現実にぶん殴るという拳技や体力の錬磨・研鑽を通じた精神力(魂)の形成にあるとするならば、大阪(という本音の世界)で子供の時から(本音で戦う)日本拳法で鍛えた精神は、青年と大人の端境期である大学4年間の日本拳法ライフによって、強烈な「我(われ)」となって実を結んだ。
これはかなりの部分が数学・(再現性のある)科学となり得るのではないでしょうか。
そんな真剣勝負・日本拳法における一つの理想的な姿を、今回、私は目の当たりに見ることができたようです。
◎ 関東の大学日本拳法
大学から日本拳法を始めた関東の各大学には、彼女のような「強烈な精神力の発露」をする人(男勝りの、大きくて張りのある声で選手を鼓舞する)は、いない(のではないか)。
しかし関東の場合、私が知るかぎり「ブログに於ける文章」によってその精神の錬磨・成熟を表現される方が多く存在し、これまで、試合(のビデオ)以上に、そんな彼・彼女たちの文章を通じ、私は大学日本拳法(の様々な位相)を楽しませてもらいました。
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