第一章・水色の名残雪
「んー……もう、あの頃の感覚は遠いけど……でも。うん、フィンさんも同行してくれるならOKですよ」
「何故私もなんだ? 守り人とは――」
「だから、ですよ。フィンさん、一人じゃ寂しいじゃないですか」
アズロはにっこりと笑うと、フィンの両手を強引に握った。
いつだったか、アラマンダに外に連れ出された、あの日の彼女のように。
「寂しい?」
訝しむフィンに、なおも微笑む。
風が吹き抜けるような、自由な笑みで。
「そんな顔してましたよ、初めてお会いした時も、一年前の関係者会合でも。……いいじゃないですか、関わったって。僕らは貴方の素性を口外しないし、ネウマさんも立場的に大丈夫でしょう。旅って一人も楽ですけど、たまには皆で笑うと面白いものですよ?」
「……私は、そんなに仏頂面をしていたか?」
仏頂面というよりは切なげな表情だよなあと思いつつ、アズロは続けた。
「はい。だから……一緒に行きましょう? あ、僕が居るとお二人がより危険に晒されるかもしれませんが、同行するからには――死守します」
「――君は」
「あ! そっか。フィンさんの力はエスタシオンさんと張り合うって聞いたし、フィンさんが本気出したら僕は消し炭になるだろうし……守るっていうのは失礼ですよね」
「いや、待て。違うんだ。……君のように、守れたら良かったのになと……思ったんだ」
ぽつりぽつりと声に出したフィンは、右手を強く握りしめる。
震える拳はそっと背中に隠され、間もなく下ろされた。
首を傾げるアズロに微笑むと、安堵の混じった声色で礼を言う。
「……何でもない。……助かるよ、アズロ君。頼りにさせてもらう。……感謝、している」
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