第6話 星が瞬く夜だから
進藤の柔らかい唇が当たる。
チュッチュッと唇や舌先を当ててきて、初々しく感じるキスだ。
望月は、進藤の唇をはんで、少し舌を入れた。
進藤はすぐに甘い吐息を吐いた。
進藤は、望月の首にキスをし始めた。
望月の手の甲に進藤の手が重ねられた。
指でそっとなぞられる。
このままだと進藤とセックスすることになる。
いいんだろうか、それで。
長谷川は、あの日どんな気持ちで俺を抱いたんだろう。
望月は、進藤の頭を撫でながら、そっと体を離した。
進藤は潤んだ目で望月を見た。
「今日だけでいいから、抱いてくれませんか…?僕は…兄を忘れたいんです。貴方に会えて、初めて仕事がなんなのかわかりました。もっとがんばりたい。僕は…ちゃんとした大人になりたいんです…。」
進藤の言葉を聞いて、望月は急にある日のことを思い出した。
『俺は、変われますかね?こんな自分、本当、嫌なんですよ。生意気なのに、寂しくて。長谷川さん、よく俺みたいなのに付き合えますね。仕事とはいえ、面倒臭いでしょ。』
俺は当時、数字で人を殴るような人間だった。
簡単に人を見下していた。
営業が上手いからとかじゃない。
薄々気づいていた。
実力主義のこの業界ですら、実力だけじゃダメなんだって。
今は長谷川のおかげで会社にいられるが、自分みたいな性格の悪い奴がいつまでも無事でいられるはずがない。
その不安とイライラを、他の社員を見下すことで誤魔化していた。
長谷川は根気強く俺の話を聞いてくれた。
でもなかなか変われなかった。
失った自分がどこにいるかわからない。
せっかく自由になったのに、結局まだ鳥籠の中。
その絶望感で、俺は正気を失いそうになっていた。
もういつ死んでもよかった。
そんな俺を、長谷川は抱いてくれた。
たった一人、そこまでしてくれた長谷川にだけは失望されたくなかった。
それが、俺の生きる理由になった。
俺と進藤は似ている。
俺は外の世界を攻撃することで自分を保ち、進藤は自分の世界に引きこもることで自分を保っているんだ。
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望月は進藤を抱き寄せて、彼の額に自分の額をあてた。
頬に手を当てて、静かに唇を重ねる。
ゆっくり、何度も。
二人の吐息が混ざり合う。
喉元にもキスをした。
大きくない喉仏を唇ではむ。
望月は進藤の服を脱がせて押し倒した。
進藤の若く引き締まった体を愛でる。
少し触っただけでも進藤は悶えた。
顔は上気して、薄っすらと汗ばんでいる。
経験が豊富なはずなのに、まるで初めてのようだ。
「望月さん…あの…。」
「何?気持ちよくなかった?」
「そうじゃなくて…。あんまり…焦らさないでください…。もう我慢できないんですけど…。」
「なんだ、さっき殊勝なことを言ったから、こっちも真剣に向き合おうと思ったのに。単に体が目当てだったのか…。」
「ち、違います!そうじゃなくて…!」
「まあ、いいや。そっちの方が俺もやりやすいし。」
そう言いながら、進藤の下半身に手を伸ばす。
初めての時は、慎重にするのが望月だった。
進藤の様子をうかがう。
「あの…望月さん…。」
「何?」
「もう、大丈夫です…。ちょっとくらい痛いのが好きなので…。」
初回でそんなに注文されるとは思わなかった。
やっぱり最近の若者はわからない。
進藤の呼吸が荒くなってきた。
可愛い顔が緩んでいやらしい。
あえぎ声も艶っぽく、こちらのSっ気を煽る。
「望月さん……あの…。」
「…今度は何…?」
「もっと激しくしてもらえますか…?」
敗北感を感じた。
本当に体目的で、俺は乗せられただけじゃなかろうか。
12歳差を感じずにいられなかった。
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