第4話
次の日、大学にある式条の幽霊研究サークルの部室にあの色白の美しい女性がまた訪ねて来ていた。
式条は昨日と同じようにインスタントコーヒーを二人分いれテーブルに置いた。
「鈴木理沙さん」
「えっ」
「あなたのお名前は鈴木理沙さんではありませんか?」
「……理沙」
女性は悲しそうな顔をしてコーヒーから立ち上る湯気を見つめていた。
昨日あれから式条は鈴木卓也の両親の家を訪ねていた。
家にいた母親は式条が事情を話すとこころよく招き入れてくれたのだ。
二十年前の冬、夕方六時頃にはすでに辺りは真っ暗で寒さも増すため住吉公園には兄妹二人だけだった。
そこへ現れたひとりの男。
男はブランコで楽しそうに遊んでいる子どもに近寄り突然妹の理沙を突き飛ばした。
鉄の柵に頭をぶつけ血を流す理沙。
兄の卓也は咄嗟に男につかみかかった。
男は卓也を殴りながら引き剥がそうと必死で腕を掴んで押した。
卓也はブランコに頭を強く打った。
兄妹は病院に運ばれたが卓也は死亡が確認された。
理沙は意識を失ったまま、二十年経った今も目を覚まさずにいるという。
そう、目の前の女性は二十年も寝たきりで成長し続けている理沙の生き霊だったのだ。
犯人の男はすぐに捕まっていた。
むしゃくしゃしていて通りかかった公園で楽しそうにしている子どもを見かけちょっと脅かしてやろうと思っただけで殺すつもりはなかったと主張していたらしい。
そしてその男が今日出所するとも。
「そうだ……お兄ちゃんが待ってる」
「ええ。卓也くんはずっとあの公園であなたが来るのを待っているみたいですよ」
「お兄ちゃん……」
理沙はすがるような目で式条を見た。
「ついてきてください」
式条は理沙にそう言うと大学を出て昨日行ったあの住吉公園へと向かった。
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