魔女殺しの魔女

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プロローグ『魔女』のいない世界

 むかしむかし、あるところにひとりの『まじょ』がいました


『まじょ』は、にんげんと『まじょ』とのあいだにうまれた、『まりょく』をもつ、いみきらわれるこでした


 りょうしんは、ふりょのじこでなくなってしまい、『まじょ』は『まもののもり』にすてられ、そこにすむひとりの『まじょ』にたすけてもらい、すくすくとそだっていきました


『まじょ』がおおきくなったあるひ、じけんはおきました


 いえにかえると、ははである『まじょ』がころされていたのです


 あかくなった『はは』をだきしめて、『まじょ』はいいました


「ころしてやる。『はは』をころしたやつを、かならず!」


 いかりにくるった『まじょ』は、それからほかの『まじょ』をひとりのこさずころしていきました


 あるものは、ほのおのまほうでころされ

 あるものは、みずのまほうで

 あるものは、かみなりのまほうで


『まじょ』は、『はは』をころした『まじょ』いがいも、ころしていきました


 せかいにたったひとりのこされた『まじょ』はさいごに、にんげんのすむくににまであしをふみいれました


 ですが、そんな『まじょ』をかんげいするにんげんなど、どこにもいません


 かぞくをまもるために、ひとりのおとこがじゅうをはなちました


 たまは『まじょ』のむねにまんまとあたり、『まじょ』はちをながしてしんでしまいました


 まったくていこうせずにしんだ『まじょ』に、きしがふしんにおもい、おそるおそる『まじょ』のくにへはいっていきました


 するとなんということでしょう、『まじょ』がぜんいんしんでいるではありませんか


 ひとつのおかに、むすうのおはかがたてられていたのをみて、きしはおおさまにこういいました


「『まじょ』はほろびました。われわれにんげんに、もうおそれるものはありません」


『まじょ』のきょうふからかいほうされたのんげんたちは、さいごの『まじょ』をころしたひを、『かいほうのひ』として、おまつりをひらきました


 そのご、さいごの『まじょ』は、にんげんのあいだで『まじょごろしのまじょ』とよばっっるようになったのでした


 おしまい




————————————————————





 静かな教室

 教壇に立つ教師の声と、黒板に叩くチョークの音、そして、生徒達のペンを走らせる音

 それだけは響いていた


「みんなご存知の通り、今日は『解放祭』だ。だが、なんのための祭りかと聞かれると、君たちはこう言うはずだ。『魔女』の恐怖から人間が解放されたから、と。確かにその通りだ。だが、所詮、君たちの持つ知識はその程度だろう。だからこの絵本を持ってきた。自分たちは高等部だぞってか?ははは、だがな、どんなややっこしい話や文章を読んだとしても、この物語に置いて一番簡潔に、はっきりと描かれているのはこの絵本だ。『魔女』によって『魔女』が殺され、最後は人間の手によって『魔女』の血は途絶える。これによって訪れた平和こそが、今我々が生きているこの世界だ。それを祝して行われるのがこの『解放祭』だ。『魔女』の恐怖を知らない君たちには、この祭りがただのどんちゃん騒ぎだとしか見えないだろうが、我々一部の大人からすれば、平和の象徴とも言えるだろう。この内容についてはしっかりと勉強するぞ。大学入試には必ず出る問題だからな」

 

 ゴーン…ゴーン…


 重い鐘の音が学校中に響き渡る


 その音を合図に、教員達は黒板への筆記を止めた


「はい、じゃぁ今日はここまで。『解放祭』だからって調子に乗って帰るが遅くなるなよ」


 流れるまま生徒達は教室から出ていく

 その中に、ポツンと1人、取り残された少女がいた


 教師は聞く


「君は帰らないのかい?お友達はみんな行っちゃったよ?」


 少女は言う


「先生に聞きたいことがあって」


 教師は言う


「へぇ、聞きたいこと。なんだい?」


 少女は聞く


「魔力を持って生まれたのは、本当に悪いことなの?」


 教師は言う


「ふむ…その質問をするに、君は微力者だね?」


 少女は言う


「そうよ。少しだけ、魔力を持って生まれた人間。そのせいで両親は殺されたし、教会の人間からはいつも罵倒されて…」


 教師は言う


「…質問についてだが、それは人間の考え方による。魔力の膨大な力が恐怖にしか見えず、それを悪と捉えてしまう…まぁ、俺はそうは思わないが…」


 少女は聞く


「先生は、悪だと思わないの?なんで?」


 教師は言う


「…なら、君には特別に授業をしてやろう。こんな絵本の知識なんかより、よっぽど美しく、残酷で、はっきりと語り継がれる話を…準備はいいかい?」


 少女は答える


「いいよ。私も…今後のために、詳しく聞いてみたい」


 教師は、教壇に備え付けてある椅子に座り、優雅にお茶を飲むごとく、話し始めた


「なら、教えてあげよう。これは、『魔女殺しの魔女』が、まだ『名無しネームレスの魔女』だった頃の、悲しく、残酷な…復讐の物語だ——————

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