人生で一度くらいは手術するでしょ!?~これから手術を受けるかもしれない全ての人に捧げる、鼻中隔湾曲症の手術体験記~
月本 招
第1話 すっごい曲がってるねえ
2023年。
盆休みが明けたとある日。
街中に蜃気楼が浮かんでそうな猛暑の中、俺は近場でグーグルマップの評価が最も高かった耳鼻科を訪れていた。
「すっごい曲がってるねえ」
俺の鼻腔内を内視鏡で覗いた初老の医者の第一声。
「
医者のはっきりした物言いにドキリとする。
「これは手術じゃないと治らないね」
一通り検査を終えて、改めて医者が言う。
手書きで丁寧に鼻腔内を描いて詳しく説明してくれた。
「
(な、なんだと……!!?)
言われてみれば思い当たる節がありまくる。
子供の頃からいびきがうるさいとか、いつも集中力が足りないとか、極めつけは、短距離はかなり速かった(中学の時、4×100mリレーの選手として県2位になったことがある←さすがの脳筋)にもかかわらず、長距離になると呼吸が苦しくなってタイムは決まって平均以下だったため体育教師から、
「短距離と長距離の差がここまである生徒なんて珍しいぞ。月本、お前マラソンが嫌いだからって手を抜いてるだろ? それか根性が足りないか」
なぁんて暴論を吐かれたり。
聞けば、それらは全てこの〈鼻中隔湾曲症〉の症状に当てはまるものだと言う。
「はぁ、手術っすか」
思わず溜息が漏れる。
これまで鼻のこと以外は普通に健康体で、大きな病気にかかった経験もなかった俺は、突然突き付けられた【手術】というパワーワードに頭の中を支配された。
「これは普通の病気ではないからね。あなたの鼻の中の形状の問題だから、薬や生活習慣と言ったもので改善することは一生無い。もちろん手術が嫌なら鼻の通りをよくする薬もあるから、それでこのままやり過ごすってこともできなくはないけど」
「いえ、手術受けます」
即答してしまった。
だが考えても結論は同じはず。
手術を受ければ治る。受けなければ一生治らない。
ただそれだけの話なのだから。
それなら手術が嫌だからと言って受けない選択肢は浮かばなかった。
「うん、それがいいと思うよ。じゃあ紹介状を用意しなきゃね。病院の希望はある?」
今日手術の話になるとは思ってもみなかったので、正直リサーチ不足だった。
もちろん、この病院に来る前に少しは調べていたので、通えそうな範囲の手術可能な病院は何となくは把握できていた。
でも、具体的にどこの病院が評判が良くて、手術費用がどれくらいかかるとか、入院は何日かかるのかなど、即答するには知識が足りなさ過ぎたのだ。
「あのぉ、病院って決めないと紹介状は書いてもらえないんでしたっけ?」
「いや、病院名を書かなければいいだけだから大丈夫だよ。ご自分で病院を決めたら、そこで紹介状を渡してもらえば手術の相談に乗ってくれるはずだから」
「そうですか。それなら病院名は書かずに紹介状をお願いします」
こうして、手術を受けることが決まったのだった。
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