オレは夢の中

森野正

プロローグ

プロローグ

 春の日差しが心地よいある日曜の昼前、オレは妹を迎えに小さな神社へと足を運んだ。いつもはお婆ちゃんが神社で遊んでいる妹を迎えに行くのだが、今日は用事があるらしい。


 妹が小さい頃は部屋で童話や絵本を読んで聞かせていたのに、今は友達と遊ぶ方が好きらしい。まぁ、俺も友達と遊ぶのに忙しくて妹を構ってやれないんだが、今日の俺はたまたま家に居たので、妹のお迎えを頼まれた。


 神社の周囲を覆うご神木、神社の前に公園があり、公園には桜の木が風に揺れている。桜の花はもう散り、新緑が息吹を感じさせていた。この公園に来るのも2年ぶりぐらいになるだろうか。昔はもっと大きかった気がするが、今見ると随分と小さい公園だと俺は思った。


 俺は妹に手を振り、迎えに来たことを知らせ、桜の木の前のベンチに座って妹たちが遊ぶ様子を眺めていた。春の暖かさが俺を優しく包み込み、俺はウトウトと眠気に誘われた。


 そんな時、黒猫が俺に近寄り、ベンチの隣に座った。

「そこは吾輩の席だ。どいてくれるかね? 」と、黒猫は突然話し始めた。

 俺は驚いて「えっ!話せるのかよ!」と聞き返した。

 すると猫は「当たり前だろう」と怪訝けげんな顔をした。


 俺は笑いをこらえながら、ベンチの端に移動した。

「お礼に吾輩が面白い夢を見させてやろう」と、黒猫が言った。

「期待しないで待ってるよ」と俺は返した。

 そして、黒猫は満足そうに毛づくろいを始め、俺はその様子を見ながら意識を手放した。

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